新人営業の育成|独り立ちまでの設計と判定のしかた
大阪府出身。幼少期に祖父が経営する建設会社の廃業を経験し、企業存続と経営の本質に関心を持つ。新卒入社したベンチャー企業では初月にトップマーケティング賞を受賞。その後、大阪支社のコンサルティング責任者として事業拡大を牽引し、社員40名から300名規模への成長と東証グロース上場に貢献。上場後はグループ企業の執行役員を歴任。2023年に株式会社XtoXを創業し、中小企業のセールス・マーケティング支援に従事。
大阪府出身。幼少期に祖父が経営する建設会社の廃業を経験し、企業存続と経営の本質に関心を持つ。新卒入社したベンチャー企業では初月にトップマーケティング賞を受賞。その後、大阪支社のコンサルティング責任者として事業拡大を牽引し、社員40名から300名規模への成長と東証グロース上場に貢献。上場後はグループ企業の執行役員を歴任。2023年に株式会社XtoXを創業し、中小企業のセールス・マーケティング支援に従事。
「3か月経ったので任せたが、商談で何も聞けずに帰ってきた」。独り立ちは期間ではなく判定で決めます。条件の書き方と、相談相手・記録の仕組みを、600社以上の戦略設計を行うXtoXが解説します。
「新人はいつ独り立ちさせるべきでしょうか」という質問をいただくことがあります。3か月なのか半年なのか、という話です。ただ、この問いの立て方だと、うまくいきません。期間が来たから独り立ちできるわけではないからです。
実際、現場で起きているのはこうした状況です。
・ 「3か月経ったので任せたが、商談で何も聞けずに帰ってきた」
・ 「先輩に同行させているが、見ているだけで身についていない」
・ 「教える側の負担が大きく、通常業務が回らない」
先に結論をお伝えします。独り立ちは期間ではなく、判定で決めてください。何ができたら一人で顧客の前に立ってよいのかを先に決め、それを満たしたときに独り立ちとします。この形にすると、育成する側もされる側も、何を目指せばよいかが明確になります。
以下では、私たちが社内で運用している育成の仕組みを開示します。特別な研修プログラムはありません。判定する場と、支える人と、記録の形の3つだけです。
期間で決めるとどうなるか
まず、期間を基準にすることの問題を整理します。
3か月で独り立ちと決めると、3か月目に何ができていても独り立ちになります。準備が整っていない人を顧客の前に出すことになり、本人にとっては過酷です。最初の商談で何も言えずに終わった経験は、その後の自信に長く影響します。
逆のことも起きます。実力が十分でも、期間が来ていないという理由で同行が続きます。本人は物足りなさを感じ、教える側は時間を取られ続けます。どちらの場合も、期間という基準が実態と合っていません。
加えて、期間を基準にすると、その間に何をするかが曖昧になります。「3か月かけて育てる」と決めても、毎週何をどこまでやるのかが決まっていなければ、実態は同行の繰り返しになります。見ているだけの時間が積み上がり、期間だけが過ぎていきます。
何ができたら独り立ちかを決める
代わりに決めるのは、独り立ちの条件です。私たちは、一人で顧客の前に立つ前に満たすべきことを、行動の言葉で書き出しています。
たとえば初回商談を任せる場合、次のような形になります。
| 独り立ちの条件を書く形 | |
|---|---|
| こう書く(判定できる) | こう書かない(判定できない) |
| 相手企業について調べた内容を、冒頭で1つ具体的に述べられる | 事前準備ができている |
| 課題の仮説を提示し、相手に確認できる | 顧客目線で話せる |
| 新規と既存の比率、単価、成約までの流れを聞ける | ヒアリング力がある |
| 自社の実績を、社内で統一した数字で正確に言える | 会社説明ができる |
| 終了時に次回の日程を提案できる | クロージングの意識がある |
左の列は、見ていれば「できた・できなかった」が分かります。だから判定する人が誰でも結果が同じになります。右の列は、判定する側の解釈が入るため、人によって結論が変わります。
この条件は、実務で使う型と一致させてください。練習のための項目を別に作ると、合格しても現場で使えません。商談の進め方の型は商談の事前準備にまとめているので、そこから条件を抜き出すのが早いはずです。
合格するまで顧客の前に立たない
条件が決まったら、それを満たしたかを確認する場を設けます。私たちは練習の場で判定し、合格するまでは一人で顧客の前に立たない運用にしています。
この形にすると、いくつかのことが自動的に決まります。まず、練習が任意の勉強会ではなくなります。次に、条件が曖昧なままにできません。そして、合格したあとに現場で崩れれば、戻ってやり直すことになります。
補足しておくと、これは新人を締め出す仕組みではありません。準備が整っていない状態で顧客の前に出すほうが、本人にとって厳しいからです。判定は、本人を守る仕組みでもあります。練習の設計は営業ロープレの設計で詳しく書いています。
XtoXの現場から
合格の判定を始めた当初、条件が文書になっておらず、判定する人の感覚で決めていた時期がありました。同じ内容の練習でも、ある人は合格、別の人は不合格という状態です。判定される側からすれば納得できません。条件を紙に書き出し、「この項目が満たされていれば合格」という形に変えたところ、判定への不満はなくなりました。当たり前のようですが、この一手間を飛ばしていたために、制度そのものへの信頼が揺らぎかけていました。
相談できる先輩を1人決める
判定の仕組みだけでは、育成は回りません。日常的に相談できる相手が必要です。
私たちは、新しく入った人に相談先となる先輩を1人紐づけています。誰に聞けばよいかが決まっていないと、新人は質問をためらいます。忙しそうな人には聞きづらく、結果として分からないまま進めてしまいます。
紐づける効果は、教える側にも及びます。担当が決まっていれば、教えることが業務になります。属人化が解けない組織の多くは、教えることが誰の仕事にもなっていません。善意に任せている限り、忙しい時期には止まります。
注意点として、この先輩は評価する立場と分けたほうがうまくいきます。評価者に弱みを見せるのは難しいものです。判定は別の人が行い、相談相手は支える役に徹します。この分離があると、新人は正直に困りごとを出せます。
やったことを本人に残させる
3つ目の仕組みが、本人に記録を残させることです。私たちは、新しく入った人に自分の取り組みを蓄積してもらう形を取っています。
残すのは、担当した案件、そこで何をしたか、何を言われたか、次に何を直すかです。難しい書式は要りません。1件につき数行で十分です。
この記録には、3つの効き方があります。
・ 本人が自分の成長を確認できる(3か月前の記録と比べられる)
・ 教える側が、どこでつまずいているかを把握できる
・ 判定の場で、感覚ではなく事実をもとに話せる
とくに1つ目が効きます。新人が不安を感じる理由の多くは、成長している実感が持てないことです。数字がまだ出ない時期は、自分が前に進んでいるかどうかが分かりません。記録が残っていれば、3か月前の自分と比べられます。「同じ場面で、以前は何も聞けなかったが、いまは課題を確認できている」——この比較が、続ける力になります。
記録の形は、案件を管理する表と分けても構いませんし、同じ表に個人の欄を足しても回ります。案件側の設計はヨミ表の作り方にまとめています。
XtoXの現場から
記録を書式で縛って失敗したことがあります。学びを整理してほしいという意図で項目を細かく決めたところ、記入そのものが負担になり、内容が形式的な言葉で埋まるようになりました。「傾聴を意識した」「課題把握に努めた」といった具合です。これでは何が起きたか分かりません。項目を減らし、「言われたことをそのまま書く」という一点に絞ったところ、記録が具体的になりました。相手の言葉が残っていれば、後から読んでも状況が分かります。書かせる量ではなく、何を書かせるかでした。
最初の1か月に何をするか
条件と仕組みが決まったら、日々の中身です。ここが決まっていないと、同行の繰り返しになります。
最初の1週間で扱うのは、商材と顧客の理解です。ただし、資料を読んで覚える形はおすすめしません。実際の受注案件を3件ほど選び、どんな会社が、何に困っていて、何を決め手に発注したのかを説明してもらいます。自社が誰に選ばれているかを、事例で理解するほうが早く身につきます。
2週目からは、部分的に手を動かします。リストの条件を考えてみる、商談前に相手企業を調べて仮説を1行書いてみる、先輩の商談に観点を決めて同行する、といった内容です。この時期に大切なのは、量より、書いたものに対して先輩が反応を返すことです。仮説を書いても誰も見なければ、書く意味を見失います。
3週目以降で、練習と判定に入ります。ここまでで商材の理解と、実際の商談を見た経験があるので、練習の質が上がります。いきなり練習から始めると、何を言えばよいか分からないまま台本を暗記することになります。
同行を見学で終わらせない
育成でよく使われるのが、先輩の商談への同行です。有効な方法ですが、見ているだけになりやすい面があります。
同行を学びに変えるには、事前に見る観点を決めてください。今日は冒頭の切り出し方だけを見る、今日は価格を聞かれた場面の対応を見る、といった具合です。観点が決まっていないと、全体をなんとなく眺めて終わります。
そして、商談後にその観点について話す時間を取ります。5分で構いません。「さっき冒頭で何を話していたか分かったか」と聞き、本人の言葉で説明してもらいます。説明できなければ、見えていなかったということです。
段階が進んだら、同行の役割を変えます。見学から、一部を任せる形へ移すわけです。まず冒頭の挨拶と会社説明だけを担当してもらい、残りは先輩が引き取ります。次は前半のヒアリングまで任せます。こうして少しずつ範囲を広げていくと、独り立ちの日にいきなり全部が降ってくることがありません。
教える側の負担を設計に入れる
育成が続かない原因の多くは、教える側の余力です。ここを設計に入れておかないと、仕組みだけ作っても回りません。
対策は2つあります。ひとつは、教える時間を業務として認めることです。同行や練習の時間を、本人の営業活動の時間から差し引いて目標を設定します。ここを曖昧にすると、教える側は自分の数字を犠牲にすることになり、育成が後回しになります。
もうひとつは、教える内容を個人に依存させないことです。条件が文書になっていて、練習の進め方が決まっていれば、誰が担当しても同じことを教えられます。逆に、教え方が個人任せだと、担当した先輩によって新人の育ち方が変わります。この構造は営業の属人化を解消する方法で扱った話と同じです。
育成のチェックリスト
| 新人営業の育成チェックリスト(10項目) |
|---|
| □ 独り立ちの条件を、期間ではなく行動で書いてある |
| □ 条件が、実務で使う型と一致している |
| □ 条件を満たしたかを判定する場がある |
| □ 判定の条件が文書になっており、誰が見ても同じ結論になる |
| □ 相談できる先輩が1人紐づいている |
| □ 相談相手と評価する人を分けてある |
| □ 本人が記録を残す形になっている(言われたことをそのまま) |
| □ 同行の前に、見る観点を決めている |
| □ 同行で任せる範囲を段階的に広げている |
| □ 教える時間を業務として目標に織り込んである |
よくある質問
条件を満たすまで数字を求めないのですか
受注の数字は、独り立ちの前後で分けて考えてください。合格前は、行動の量(架電数や同行数)と条件の達成度を見ます。合格後は、通常の指標で見ます。準備が整う前から受注を求めると、本人は目先の数字を追い、型が身につきません。順番を守るほうが、結果として早く戦力になります。
中途入社の経験者にも同じ流れが必要ですか
同じ関門を通ってもらうことをおすすめします。経験が長い方ほど自己流が固まっており、前職での型が自社の商材と顧客に合わないことがあります。ただ、目的の説明は丁寧にしてください。「実力を疑っているのではなく、自社の型と数字の言い方をそろえる場です」と伝えると、協力していただけます。経験者の練習からは、こちらが学べる言い回しが出てくることもあります。
営業が数名の会社でも仕組みは必要ですか
大がかりな仕組みは要りません。条件をA4の1枚に書き、練習で判定し、相談相手を決める——この3つだけで足ります。むしろ人数が少ない会社ほど、1人が抜けたときの影響が大きいので、育て方を残しておく価値があります。
独り立ちまでどのくらいかかりますか
商材の複雑さと本人の経験によって変わるため、期間の目安は示しません。ただ、条件を決めて練習を回していれば、どこまで進んでいるかは常に見えます。「あと2項目で合格」という状態が分かるほうが、期間の目安より本人にとって有用です。逆に、期間だけを示して条件がない状態が、最も不安を生みます。
まとめ:判定があれば期間は要らない
新人営業の育成でまず決めるのは、期間ではなく条件です。何ができたら一人で顧客の前に立ってよいのかを行動の言葉で書き、それを判定する場を設けます。準備が整った人から順に独り立ちしていく形にすれば、早すぎる独り立ちも、長すぎる同行もなくなります。
あわせて、相談できる先輩を1人決め、本人に記録を残してもらいます。判定する仕組み、支える人、記録の形——この3つで育成は回ります。
次に新しい人が入る前に、独り立ちの条件を5つ書き出してみてください。書けない項目があれば、それは自社の型がまだ言葉になっていない部分です。
営業の育成でお悩みの方へ
株式会社XtoXは、600社以上の戦略設計と200社を超える導入実績をもとに、営業の型づくりから育成の設計・定着までを一気通貫で支援しています。いまの育て方の整理からご相談いただけます。
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