ヨミ表の作り方|受注予測が当たる案件管理の7列と確度の決め方
大阪府出身。幼少期に祖父が経営する建設会社の廃業を経験し、企業存続と経営の本質に関心を持つ。新卒入社したベンチャー企業では初月にトップマーケティング賞を受賞。その後、大阪支社のコンサルティング責任者として事業拡大を牽引し、社員40名から300名規模への成長と東証グロース上場に貢献。上場後はグループ企業の執行役員を歴任。2023年に株式会社XtoXを創業し、中小企業のセールス・マーケティング支援に従事。
大阪府出身。幼少期に祖父が経営する建設会社の廃業を経験し、企業存続と経営の本質に関心を持つ。新卒入社したベンチャー企業では初月にトップマーケティング賞を受賞。その後、大阪支社のコンサルティング責任者として事業拡大を牽引し、社員40名から300名規模への成長と東証グロース上場に貢献。上場後はグループ企業の執行役員を歴任。2023年に株式会社XtoXを創業し、中小企業のセールス・マーケティング支援に従事。
「ヨミ表の確度がまったく当たらない」。原因は表の形ではなく、確度を担当者の感覚で書いていることです。7列の項目設計、確度を事実で定義する方法、形骸化しないヨミ会議の運用まで、600社以上の戦略設計を行うXtoXが解説します。
月末が近づくと、営業責任者が「今月、あといくら積める?」と聞き、担当者は頭の中の案件を思い浮かべて「たぶん300万くらいは」と答えます。そして月が締まってみると、届いていない——多くの会社で毎月繰り返されている光景ではないでしょうか。
受注の見込みを管理する道具が、ヨミ表です。ご相談の場でヨミ表の話になると、こんな声をよくうかがいます。
・ 「作ってはみたが、書かれている確度がまったく当たらない」
・ 「最初の月だけ更新されて、いまは誰も見ていない」
・ 「そもそも何の項目を管理すればいいのか分からない」
先に結論をお伝えします。ヨミ表が当たらない原因は、表の形ではなく確度の決め方にあります。担当者の感覚で「A(堅い)」「B(五分五分)」と書いている限り、何度作り直しても予測は外れます。確度を感覚から行動の事実に置き換えること——ヨミ表づくりの核心はこの一点です。
以下では、ヨミ表の意味と項目の設計、確度を事実で定義する方法、そして表が形骸化しないための運用(ヨミ会議)までを順にまとめます。私たち自身が自社の案件管理で回している型をもとにしています。
ヨミ表とは何を管理する表か
ヨミ表とは、進行中の案件を一覧にして、それぞれの受注見込み(ヨミ)を管理する表です。「読み」が語源で、今月・今期の売上がいくら着地しそうかを「読む」ための道具として、営業組織で古くから使われてきました。
似た言葉に案件管理やパイプライン管理がありますが、指しているものはほぼ同じです。大事なのは名前ではなく、この表が2つの役割を持っている点です。ひとつは着地予測で、受注金額×確度を積み上げて、目標との差分を早く知ることです。もうひとつは行動管理で、差分を埋めるために、どの案件を、誰が、いつまでに動かすかを決めることです。多くの会社では前者だけが意識され、後者が抜け落ちています。ここが形骸化の入口になります。
項目は7列あれば足りる
ヨミ表はエクセルやスプレッドシートで十分に作れます。列を増やすほど更新が続かなくなるので、最初は次の7列に絞ってください。
| ヨミ表の基本の列と、書くこと | ||
|---|---|---|
| 列 | 書くこと | 注意 |
| 案件名・企業名 | 誰との、何の案件か | 1行1案件。同じ企業でも案件が違えば行を分ける |
| 担当者 | 自社側の責任者 | 「営業部」ではなく個人名まで |
| 金額 | 受注した場合の金額 | 未確定なら仮額と明記。空欄にしない |
| 確度ランク | A・B・Cなどの段階 | 次章の「事実の定義」で運用する。感覚で書かない |
| 受注予定月 | いつの売上として読むか | 相手の決裁時期を根拠に。願望で書かない |
| 次のアクション | 誰が・何を・いつまでに | 最重要列。ここが空欄の案件は動いていない案件 |
| 前回から動いたこと | 直近の変化を1行で | 2回連続で空欄なら停滞案件として扱う |
7列のうち、着地予測に使うのは金額・確度・予定月の3列ですが、表の価値を決めるのは「次のアクション」の列です。予測が悪い数字でも、この列が埋まっていれば手は打てます。逆にここが空欄のまま確度だけ更新される表は、天気予報を眺めているのと同じです。
確度は感覚ではなく事実で定義する
ここが本記事の核心です。ヨミ表が当たらない会社の確度欄は、ほぼ例外なく担当者の感覚で書かれています。「手応えがあったからB」「社長がいい人だったからA」といった具合です。感覚は人によって基準が違ううえ、楽観に寄ります。だから積み上げた数字が毎月外れるのです。
解決策は、確度ランクを起きた事実で定義することです。たとえば次のような形です。
| 確度ランクを「事実」で定義する例 | ||
|---|---|---|
| ランク | 満たすべき事実(すべて確認できて初めて昇格) | 感覚で書くとどうなるか |
| A(今月読める) | 決裁者が金額と開始時期に口頭で合意し、発注手続きの担当と期日が決まっている | 「先方がすごく乗り気」がAになる |
| B(来月〜来期) | 見積もりを提出済みで、決裁者が検討の場に上げる日程を明言している | 「見積もりを出した」だけでBになる |
| C(育成中) | 課題の合意が取れ、次回の商談日程が確定している | 名刺交換しただけの相手が並ぶ |
定義の言葉は自社の商流に合わせて変えて構いません。守ってほしい原則は1つだけです。ランクの条件を、担当者の主観(乗り気・手応え)ではなく、確認できた事実(誰が・何と言ったか・何が決まったか)で書くことです。「事実と解釈を分ける」という、私たちのコンサルティングの行動規範をヨミ表に適用した形です。決裁者・予算・時期といった確認事項の枠組みはBANTの解説と地続きです。
XtoXの現場から
支援先で最初にヨミ表を拝見すると、確度欄が「50%」で埋まっていることがよくあります。担当者に理由を聞くと、返ってくるのは「正直、分からないので真ん中にしています」という答えです。責める話ではありません。感覚で書けと言われれば、分からないものは真ん中に寄るのが自然です。その会社では、確度の定義を「決裁者と話せたか」「見積もりの反応を確認できたか」という事実の質問に置き換えました。すると50%の案件の多くがCに落ち、着地予測は一度大きく下がりました。ただ、下がった数字のほうが実際の着地と合っていたのです。予測が当たり始めてから、経営の打ち手の議論が初めて成立するようになりました。
ヨミ会議は数字を詰める場にしない
表ができたら、週に1回、短くてよいのでヨミ表を囲む場を持ちます。ここでの運用が、表が生きるか形骸化するかを分けます。
やってはいけないのは、この場を「なぜ上がらないんだ」と数字を詰める場にすることです。詰められると分かっている表に、担当者は正直な確度を書きません。悪い情報ほど遅く出てくるようになり、表は実態から離れていきます。ヨミ表が更新されなくなる本当の理由は、面倒だからではなく、正直に書くと損をするからです。
代わりに、会議の議題を「次のアクション」の列に固定します。案件ごとに確認するのは、前回から何が動いたか、次に誰が何をいつまでにやるか、そして会社として手伝えることはあるか——この3点だけです。停滞している案件は責めるのではなく、動かし方を一緒に決めるか、いったんヨミから外すかを判断します。「検討します」で止まった案件の追い方は、この場の定番の議題になります。
XtoXの現場から
私たち自身の反省もあります。社内のヨミ会議が、いつの間にか着地見込みの報告会になっていた時期がありました。数字を読み上げて、足りない、頑張ります、で終わる30分です。数字は全員が表を見れば分かるのだから、読み上げる時間は要りません。いまは各案件について「次のアクションが決まっているか」だけを確認し、決まっていない案件にだけ時間を使う形にしています。会議は短くなり、表の「次のアクション」列が空欄のまま週をまたぐことがなくなりました。
エクセルで足りる規模と、SFAに移る目安
ヨミ表の話をすると、必ず「SFA(営業支援システム)を入れるべきか」という質問が出ます。SFAベンダーの記事は当然「エクセルは限界がある」と書きますが、実務の答えはもう少し中立です。
営業が数名で、同時に動く案件が数十件までなら、エクセルやスプレッドシートのヨミ表で十分に回ります。この規模でSFAを入れると、入力項目の多さに運用が負けて、結局エクセルに戻る会社を何社も見てきました。道具を変える前に、確度の事実定義と週次の会議という運用を固めるほうが先です。運用が固まっていない組織は、道具を替えても同じ結果になります。
SFAを検討する目安は、営業が10名を超えて表の同時編集が事故り始めたとき、案件の履歴を個人のメモではなく組織で持つ必要が出たとき、そしてマーケティング側の仕組みと接続したくなったときです。その場合も、エクセルで固めた列と確度定義をそのまま移せば、導入はスムーズに進みます。
着地予測の計算と、毎月の答え合わせ
確度ランクが事実で定義できたら、着地予測は簡単な計算で出せます。ランクごとに掛け率を決め(たとえばAは90%・Bは50%・Cは10%)、各案件の金額に掛けて合計するだけです。A案件300万円とB案件400万円、C案件200万円なら、読みは270万+200万+20万で490万円になります。
この予測を目標と並べると、差分が数字で見えます。目標800万円に対して読みが490万円なら、足りない310万円をどう埋めるか——B案件を今月中にAへ動かすのか、新しい商談を積むのか——が、ヨミ会議の具体的な議題になります。予測は当てるためだけでなく、月の早い段階で打ち手を決めるために使うものです。
そして月末に、必ず答え合わせをしてください。予測490万円に対して実際の着地はいくらだったのか、ズレたならどのランクの案件が読みどおりに決まらなかったのか、を確かめます。この振り返りを数か月続けると、掛け率が自社の実際の数字に補正されていきます。世間の平均値ではなく、自社の商流で実測した掛け率——これが、経営会議で使える受注予測の正体です。
ヨミ表づくりのチェックリスト
| ヨミ表づくりのチェックリスト(10項目) |
|---|
| □ 列は7列前後に絞ってある(増やしたくなったら理由を言えるか) |
| □ 1行1案件になっている |
| □ 確度ランクの条件を、事実の言葉で文書化してある |
| □ 確度の定義を営業全員が同じ言葉で説明できる |
| □ 受注予定月の根拠が、相手の決裁時期になっている |
| □ 全案件に「次のアクション(誰が・何を・いつまで)」が入っている |
| □ 週1回、表を囲む場が予定に固定されている |
| □ 会議の議題が数字の詰めではなく、次のアクションになっている |
| □ 2回連続で動きのない案件の扱い(外す・戻す)を決めてある |
| □ 月末に、予測と実際の着地の差を振り返る場がある |
よくある質問
確度は何段階に分けるのがよいですか
3〜4段階をおすすめします。段階を増やすほど精密に見えますが、事実で定義できる境目はそう多くありません。5段階以上にすると境目が曖昧になり、結局感覚で振り分けることになります。まず3段階で運用し、どうしても足りなければ増やす順番が安全です。
確度は%とランクのどちらで書くべきですか
運用の初期はランクをおすすめします。パーセントは精密に見えて、実際は感覚の数字になりがちです(だから50%に集まるのです)。ランクごとの掛け率(Aは9割・Bは5割など)を決めて金額に掛ければ、着地予測の計算はランクでも成立します。掛け率は毎月の実績との差を見ながら自社の数字に補正していきます。
担当者が更新してくれません
まず疑うべきは、表が担当者を守る道具になっているかです。正直に書くと詰められる表は、必ず更新が止まります。会議の議題を次のアクションに変え、確度が下がる報告を歓迎する姿勢を見せてください。早く分かるほど手が打てるのですから、実際に歓迎すべき情報です。そのうえで、更新のタイミングを「商談の直後」ではなく「週1回のヨミ会議の前」に固定すると、習慣として続きやすくなります。
まとめ:ヨミ表は確度の定義がすべて
ヨミ表は、7列のシンプルな表で始められます。ただし、形を整えただけでは当たりません。確度を担当者の感覚から確認できた事実に置き換え、週1回の場で「次のアクション」を決める——この2つの運用がそろって、初めて受注予測は当たり始めます。
まずは今の案件を7列に書き出し、確度ランクの条件を事実の言葉で3つ書いてみてください。おそらく一度、着地予測は下がります。その下がった数字が、経営判断に使える最初の本当の数字です。
営業の数字の管理でお悩みの方へ
株式会社XtoXは、600社以上の戦略設計と200社を超える導入実績をもとに、案件管理の設計から週次の運用定着までを一気通貫で支援しています。いまお使いのヨミ表の見直しからご相談いただけます。
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