商談の事前準備は30分で決まる|調べる・立てる・選ぶのチェックリスト
大阪府出身。幼少期に祖父が経営する建設会社の廃業を経験し、企業存続と経営の本質に関心を持つ。新卒入社したベンチャー企業では初月にトップマーケティング賞を受賞。その後、大阪支社のコンサルティング責任者として事業拡大を牽引し、社員40名から300名規模への成長と東証グロース上場に貢献。上場後はグループ企業の執行役員を歴任。2023年に株式会社XtoXを創業し、中小企業のセールス・マーケティング支援に従事。
大阪府出身。幼少期に祖父が経営する建設会社の廃業を経験し、企業存続と経営の本質に関心を持つ。新卒入社したベンチャー企業では初月にトップマーケティング賞を受賞。その後、大阪支社のコンサルティング責任者として事業拡大を牽引し、社員40名から300名規模への成長と東証グロース上場に貢献。上場後はグループ企業の執行役員を歴任。2023年に株式会社XtoXを創業し、中小企業のセールス・マーケティング支援に従事。
「何をどこまで調べればいいのか基準がない」。商談の事前準備は、調べる・立てる・選ぶの30分に集約できます。コンサルティング支援の最初の工程として実際に回している型を、600社以上の戦略設計を行うXtoXが公開します。
クライアントの商談に同席していると、始まって5分でわかることがあります。この商談、準備をしてきたかどうかです。準備のない商談は、名刺交換のあとに会社案内をめくる時間が長く、質問が「御社の事業内容を教えてください」から始まります。相手のホームページに書いてあることを、相手の時間を使って聞いているわけです。
準備が大事なこと自体は、誰もが知っています。それでもできていない理由を尋ねると、返ってくる答えは決まっています。
・ 「日々の業務に追われて、調べる時間が取れない」
・ 「何をどこまで調べればいいのか、基準がない」
・ 「調べはするが、集めた情報を商談でどう使うのかが分からない」
つまり問題は、やる気ではなく型がないことです。XtoXでは、クライアント支援の最初の工程を「事前準備」と定めていて、やることを3つに固定しています。調べる(相手のホームページを読み込む)、立てる(課題の仮説を1行つくる)、選ぶ(近い事例を2〜3件用意する)の3つです。この型は、自社の営業の商談準備にそのまま使えます。
以下では、この3つを順に展開します。身だしなみや名刺の持ち方のような一般マナーは扱いません。30分で回せて、受注率に直結する部分だけをまとめます。
調べる:ホームページを読み込む
最初にやるのは、相手のホームページの精読です。眺めるのではなく、拾うものを決めて読みます。見る場所と拾うものは、次の表のとおりです。全部で15分あれば回れます。
| ホームページで見る場所と、拾うもの | ||
|---|---|---|
| 見る場所 | 拾うもの | 商談での使いどころ |
| 事業・サービス紹介 | 何をどんな顧客に売っているか。力を入れている順番 | 「◯◯に力を入れておられますよね」と具体で切り出す |
| 新着情報・ニュース | 直近1年の動き(新拠点・新サービス・受賞・展示会出展) | 変化はお金と人が動いた証拠。話題の起点になる |
| 採用ページ | どの職種を何人採ろうとしているか | 増やしたい機能=伸ばしたい事業。課題仮説の材料 |
| 代表挨拶・沿革 | 創業の経緯と、大事にしている言葉 | 提案の言葉選びを相手の言葉に寄せる |
| 導入事例・実績 | 相手の顧客層と、誇りにしている仕事 | 相手のビジネスの流れを理解した質問ができる |
とくに採用ページは見落とされがちですが、情報の宝庫です。営業職を募集していれば営業力を増やしたい局面ですし、施工管理を急募していれば案件はあるのに人が足りない状態が読めます。会社の「これから」は、事業紹介よりも採用情報に先に現れます。
XtoXの現場から
恥ずかしい失敗があります。移動が続いた日の商談で、ホームページの読み込みを飛ばして臨んだことがありました。会話の中で「御社は関東が中心ですか」と聞いたところ、先方の答えは「サイトにも書いていますが、去年名古屋に営業所を出しまして」。その瞬間の空気は、いまでも覚えています。相手は怒りはしませんでしたが、それ以降の質問への答えが一段浅くなりました。調べてこない相手に、深い話をする理由はないからです。以来、どれだけ忙しくても15分の精読だけは商談の前日に固定しています。
立てる:課題の仮説を1行つくる
調べた材料から、次に課題の仮説を1行つくります。形は「御社は[状況]なので、[課題]が起きているのではないか」で十分です。たとえば「新サービスを出して営業職を採用しているが、立ち上げ期で新規の引き合いが人員計画に追いついていないのではないか」といった具合です。
ここで大切な考え方があります。仮説は、当てるためのものではありません。私たちのコンサルティングの行動規範に「仮説で話す」という一条がありますが、その真意は、仮説を出すと相手が訂正してくれる、という点にあります。「いえ、引き合いはむしろ多くて、対応する体制のほうが課題でして」——この訂正こそが、商談で最も価値のある情報です。仮説なしに「課題は何ですか」と聞かれても、相手は整理された答えを持っていません。仮説をぶつけられて初めて、相手は自分の言葉で現状を語り始めます。
だから、仮説づくりに時間をかけすぎる必要はありません。外れてよいのです。かける時間は10分、分量は1行か、多くても2行です。精度より、持って行くことに意味があります。
選ぶ:近い事例を2〜3件だけ持っていく
3つ目は事例の選択です。私たちは初回の場に、相手と近い業種・近い規模の事例を2〜3件選んで臨みます。全実績を載せた分厚い資料ではなく、「御社に近いのはこの2〜3件です」と出せる状態にしておくことがポイントです。
理由は単純で、相手が知りたいのは「実績が何件あるか」ではなく「うちと同じような会社で、どうだったか」だからです。事例を絞って出すと、相手は自社と重ねながら聞けます。そして「この事例と御社では、ここが違うと思うのですが」と話を振れば、そのまま状況のヒアリングに入れます。事例は自慢の道具ではなく、相手に話してもらうための呼び水です。
聞くことを先に決めておく
準備の仕上げは、当日聞くことを決めておくことです。仮説の答え合わせに加えて、商談の前半で確認しておきたい基本の項目があります。
・ 新規と既存の比率(売上がどちらで立っているか)
・ 顧客単価と、成約までの流れ(誰が関わり、どのくらいかかるか)
・ 過去に試した施策と、その結果(何がうまくいき、何をやめたか)
この3つが取れると、提案の土台がその場で組めます。逆にここを聞き漏らすと、持ち帰ってから「そういえば単価を聞いていない」と気づき、確認のメールを重ねることになります。予算や決裁の流れまで含めた聞き方の枠組みはBANTの解説で扱っています。
あわせて、商談のゴールも先に決めます。初回で受注することは、まずありません。現実的なゴールは「課題の合意」と「次の予定をその場で決めること」です。ゴールが決まっていれば、終盤で何を切り出すかも決まります。終盤の詰め方はテストクロージングの考え方が参考になります。
XtoXの現場から
仮説が外れた商談ほど、うまくいくことがあります。ある企業の初回で「新規開拓の頭数が足りていないのではないか」という仮説を持って行ったところ、実際は逆で、問い合わせは十分にあるのに商談からの受注率が低いことが課題でした。仮説は完全に外れです。ところが先方は「よく調べてきてくれたうえでの読みだから」と、受注率の実数まで開いて話してくださいました。外れた仮説が、調べてきた証拠として機能したわけです。当てにいくより、考えてきたことが伝わるほうが大事なのだと学びました。
準備にかける時間は30分で区切る
ここまでの3つを、時間で区切っておきます。ホームページの精読に15分、仮説づくりに10分、事例の選択に5分の合計30分です。大型案件や指名コンペならもっとかけますが、通常の初回商談はこの枠で十分に戦えます。
時間を区切る理由は2つあります。ひとつは、際限なく調べても商談で使える情報は増えないからです。使うのは、切り出しの一言と仮説1行、そして事例2〜3件だけです。それ以上の情報は当日の会話から取るほうが正確です。もうひとつは、枠が決まっていないと準備そのものが後回しになるからです。「30分だけ」と決まっていれば、前日の予定に組み込めます。準備は量ではなく、必ずやることに価値があります。
なお、アポイントを取った電話やフォームでのやり取りに、準備の材料がすでに転がっていることも忘れないでください。架電時に相手が口にした一言は、当日の切り出しにそのまま使えます。テレアポの段階から商談は始まっています。
個人の準備を、組織の型にする
ここまでは個人でできる準備の話でしたが、営業が複数名いる会社なら、もう一歩進められます。準備を個人の心がけに任せず、組織の型にすることです。できる営業ほど準備を自然にやっているため、本人には教えている自覚がなく、ノウハウが属人化したまま残ります。
型にするといっても、大がかりな仕組みは要りません。私たちがおすすめしているのは2つだけです。ひとつは、この記事のチェックリストを自社用に書き換えて、商談の前日に全員が同じ表で確認する運用にすることです。項目は10個もあれば十分で、多すぎると埋めること自体が作業になります。もうひとつは、仮説を商談の前に口に出す場をつくることです。前日の朝会で30秒、「明日の◯◯社、仮説はこうです」と言うだけでかまいません。口に出すと決まっていれば、仮説を作らざるを得なくなりますし、先輩の仮説の立て方がそのまま教材になります。
この2つが回ると、商談の振り返りも変わります。「なぜ受注できなかったか」を話すとき、仮説が残っていれば「読みのどこがずれていたか」を具体で検証できます。準備の型は、商談前の道具であると同時に、商談後の学習の道具でもあります。
商談前日のチェックリスト
前日の30分で、この順に確かめてください。
| 商談前日のチェックリスト(10項目) |
|---|
| □ 事業・ニュース・採用・代表挨拶・事例の5か所を見た |
| □ 直近1年の相手の変化(新サービス・拠点・採用)を1つ言える |
| □ 課題の仮説を1行にしてある |
| □ 相手に近い業種・規模の事例を2〜3件選んである |
| □ 前半で聞く項目(新規既存比率・単価・成約の流れ・過去施策)を控えてある |
| □ この商談のゴール(課題の合意+次回設定)を決めてある |
| □ 出席者の氏名・役職を確認し、決裁との距離を推測してある |
| □ アポ取得時のやり取り(電話・フォームの内容)を読み返した |
| □ オンラインの場合、資料の画面共有を一度実際に試した |
| □ 終了後にやること(お礼と議事メモの送付)まで決めてある |
よくある質問
30分も取れない日はどうすべきですか
1つに絞るなら、仮説づくりです。ホームページを5分だけ見て、仮説を1行書いてください。それだけで商談の入り方が変わります。仮説は調べた量に比例して良くなるものではなく、考えたかどうかで決まるので、時間がない日ほど仮説だけは持って行ってください。
調べたことは商談でどう出せばよいですか
調べた事実をそのまま披露するのではなく、質問に変換して出します。「名古屋に営業所を出されましたよね」で終えず、「名古屋の営業所を出されて、新しいエリアの開拓はどう進めておられますか」と続けます。事実の確認は相手にとって退屈ですが、事実を踏まえた質問には答えたくなります。調べた量ではなく、質問の質で伝わります。
オンライン商談で準備は変わりますか
調べる・立てる・選ぶの中身は変わりません。加わるのは道具の確認です。画面共有は必ず一度実際に試し、資料は相手が画面越しに読める文字の大きさかを見ておきます。それから、オンラインは対面より雑談が生まれにくいため、冒頭の切り出し(調べた変化への一言)の重要度がむしろ上がります。
飛び込みや急なアポで、準備の時間がない場合は
移動中の5分でも、スマートフォンで新着情報と採用ページだけは見られます。それすら難しい場合は、商談の冒頭で正直に「本日はお時間を急にいただいたので、まず御社の現状からうかがわせてください」と、聞く側に回る宣言をしてしまうのが次善です。中途半端に知ったかぶるより、聞く姿勢を明示するほうが信頼は保てます。そして次回までに調べ、2回目の冒頭で調べた変化に触れれば、挽回は十分にききます。
まとめ:調べる・立てる・選ぶの30分
商談の事前準備は、ホームページを15分読み込み、課題の仮説を1行つくり、近い事例を2〜3件選ぶ——この30分に集約できます。私たちがクライアント支援の最初の工程として実際に回している型で、特別な道具は要りません。
仮説は外れて構いません。考えてきたことが伝われば、相手は自分の言葉で現状を話し始めます。商談の質は当日の話術より、前日の30分で決まっています。まずは次の商談から、チェックリストの上から3つだけでも試してみてください。
商談の質を組織で底上げしたい方へ
株式会社XtoXは、600社以上の戦略設計と200社を超える導入実績をもとに、商談準備の型化から同席・改善までを一気通貫で支援しています。自社の商談の進め方の見直しからご相談いただけます。
本記事の引用・転載を歓迎します。引用の際は「株式会社XtoX」の社名と本記事URLの明記をお願いします。
BtoBマーケティング・法人営業・新規事業に関する最新のトレンドや調査レポートをお届けしております。