商談化率の平均値は比べられない|分母を決めてから改善する手順
大阪府出身。幼少期に祖父が経営する建設会社の廃業を経験し、企業存続と経営の本質に関心を持つ。新卒入社したベンチャー企業では初月にトップマーケティング賞を受賞。その後、大阪支社のコンサルティング責任者として事業拡大を牽引し、社員40名から300名規模への成長と東証グロース上場に貢献。上場後はグループ企業の執行役員を歴任。2023年に株式会社XtoXを創業し、中小企業のセールス・マーケティング支援に従事。
大阪府出身。幼少期に祖父が経営する建設会社の廃業を経験し、企業存続と経営の本質に関心を持つ。新卒入社したベンチャー企業では初月にトップマーケティング賞を受賞。その後、大阪支社のコンサルティング責任者として事業拡大を牽引し、社員40名から300名規模への成長と東証グロース上場に貢献。上場後はグループ企業の執行役員を歴任。2023年に株式会社XtoXを創業し、中小企業のセールス・マーケティング支援に従事。
「うちの商談化率は低いのでしょうか」。世間で語られる平均値は分母が揃っておらず比較に使えません。自社の分母と分子を定義し、落ちている場所を特定して改善する手順を、600社以上の戦略設計を行うXtoXが解説します。
「うちの商談化率は低いのでしょうか」というご相談をいただくことがあります。数字をうかがうと、10%だったり4%だったりします。ただ、この質問には答えられません。何を分母にしているかが分からないからです。
実際、商談化率について調べると、こんな状況に行き当たります。
・ ある記事では「平均は30%程度」と書かれている
・ 別の記事では、500件のアプローチから20件の商談で「4%は非常に低い」と評価されている
・ さらに別の記事では、100件のリードから20件で20%という計算例が示されている
どれも間違っていません。分母が違うだけです。リード数を分母にするか、架電やメールを送った件数を分母にするかで、同じ活動でも数字は一桁変わります。にもかかわらず、同じ「商談化率」という言葉で平均値が語られているため、自社の数字と比べようがない状態になっています。
先に結論をお伝えします。商談化率を改善したいなら、世間の平均と比べるのをやめてください。まず自社の分母と分子を定義し、その数字の推移を見てください。比べる相手は他社ではなく、先月の自社です。
まず何を数えるかを決める
商談化率を計算するには、分母と分子の両方を決めなければなりません。ここが曖昧なまま「率」を出すと、月ごとに数え方が変わり、良くなったのか悪くなったのかも分からなくなります。
分母の候補は、営業の流れのどこを起点にするかで変わります。
| 分母の候補と、その率が示すもの | ||
|---|---|---|
| 分母 | この率で分かること | 数字の出方 |
| アプローチした件数(架電・送信) | リストと最初の一言の精度 | 低く出る。数%の範囲になることが多い |
| 担当者と話せた件数 | 会話の質と提案の切り出し方 | 中間の値になる |
| 問い合わせ・資料請求の件数 | 初動の速さとフォローの設計 | 高く出る。相手に関心がある状態から始まる |
| アポイントが取れた件数 | アポイントの質(本当に商談になるアポか) | 最も高く出る |
この表を見ると、なぜ世間の数字がばらつくのかが分かります。4%という数字はおそらく1行目、30%という数字は3行目か4行目の話をしています。どちらも正しく、比べられないだけです。
分子、つまり「商談」の定義も決めてください。名刺交換して雑談しただけを商談と数えるのか、課題を聞き出せた場を商談と数えるのか——ここも社内で揃っていないと、担当者によって数字が変わります。
私たちは、案件の確度を定義するときと同じ考え方を使います。「手応えがあった」ではなく「確認できた事実」で線を引くことです。たとえば商談を「相手の課題を聞き取り、次回の予定が決まった場」と定義すれば、誰が数えても同じ結果になります。この考え方はヨミ表の作り方で書いた確度の定義とまったく同じです。
XtoXの現場から
支援先で「商談化率が下がった」という報告を受けたことがあります。前月は18%、今月は9%という数字でした。半分に落ちたので原因を探すことになりました。ところが数字の作り方を確認すると、前月は問い合わせ件数を分母にしていて、今月から架電件数も分母に加えていました。活動量が増えたぶん分母が膨らんだだけで、商談の件数はむしろ増えていたのです。あのとき原因の分析に入っていたら、ありもしない問題を追いかけていました。率を見る前に、数え方が変わっていないかを確認する——これが最初の一手です。
率ではなく件数で見る場面もある
もうひとつ注意したいのが、率だけを追うと判断を誤る場面があることです。
商談化率を上げる最も簡単な方法は、アプローチする件数を減らすことです。見込みの高い相手だけに絞れば、率は上がります。ただ、商談の件数そのものは減るかもしれません。率が改善したのに売上が落ちる、という結果になります。
だから、率と件数は必ず並べて見てください。商談化率が5%から8%に上がったとしても、商談件数が20件から16件に減っていれば、それは改善ではありません。逆に率が下がっても件数が伸びているなら、新しい層を開拓できている可能性があります。
見るべき数字は、分母の件数、分子の件数、そして率の3つです。この3つを並べた表を毎月更新するだけで、判断の精度が変わります。
どこで落ちているかを特定する
定義が決まったら、次は原因の特定です。商談化率が低いという事実だけでは、打ち手が決まりません。流れを分けて、どこで落ちているかを見ます。
アプローチから商談までを分けると、こうなります。
・ 届いているか(架電がつながる、メールが開かれる)
・ 担当者に到達しているか(受付や窓口で止まっていないか)
・ 話を聞いてもらえているか(最初の一言で切られていないか)
・ 次の場につながっているか(提案の切り出しができているか)
どこで落ちているかによって、直す場所が変わります。届いていないならリストの問題、担当者に到達していないなら受付での話し方、話を聞いてもらえていないなら最初の一言、次につながっていないなら提案の切り出し方です。
記録がないと、この分解はできません。逆に言えば、かけた件数と、どこまで進んだかを記録するだけで、原因の場所は見えてきます。話し方の設計はテレアポのトークスクリプトにまとめていますが、直す前にどこを直すのかを決めてください。
上流を疑う
商談化率が低いとき、多くの会社は話し方を直そうとします。それも有効ですが、効果が大きいのは上流です。
誰に届けているかを見直すほうが、話し方を磨くより早く効きます。自社の商材が合わない相手にどれだけ上手に話しても、商談にはなりません。過去に受注できた会社の共通点から条件を作り直すと、同じ話し方でも数字が動きます。この考え方は営業リストは買うべきかで書いた「条件が先」と同じです。
問い合わせや資料請求からの商談化率が低い場合は、初動の速さを疑ってください。関心が高まっているのは、行動を起こした直後です。数日空くと、他社に相談が進んでいたり、社内の優先度が下がったりします。当日か翌営業日には連絡する体制になっているかを確認してください。
それから、アポイントの定義も見直す価値があります。件数を追う運用にすると、担当者は「とりあえず会える約束」を積み上げます。相手に関心がないアポイントは、商談にはなりません。アポイントの数ではなく、課題を聞き出せた場の数を目標に置くと、活動の質が変わります。
初動の速さが最も効く
問い合わせや資料請求を分母にしている場合、改善の効果が最も大きいのは初動の速さです。話し方の工夫より、連絡までの時間のほうが数字を動かします。
理由は相手の状況を考えれば明らかです。問い合わせをした時点で、相手は何かを検討しています。そして多くの場合、複数社に声をかけています。数日後に連絡すれば、すでに他社と話が進んでいるか、社内の関心が薄れているかのどちらかです。
やることは単純で、当日か翌営業日には必ず連絡する体制を作ることです。担当者が不在でも代わりに連絡できるよう、誰が受けるかを決めておきます。休日に入った問い合わせの扱いも同様です。仕組みで担保しないと、忙しい時期に必ず遅れます。
連絡の内容も、いきなり商談の打診にしないほうが通ります。まず問い合わせの内容を確認し、相手の状況を聞きます。そのうえで「詳しくお話しするお時間をいただけますか」と進めます。関心の段階に合わせた接触の考え方は、リードの扱い方の整理と合わせて設計してください。
世間の平均を使わない
ここは強くお伝えしたい部分です。商談化率の平均値を目標に置くのは避けてください。
理由は3つあります。ひとつは、冒頭で述べたとおり分母が揃っていないことです。比較の前提が違う数字を目標にしても意味がありません。もうひとつは、商材によって適正値がまったく違うことです。単価が数万円の商材と数千万円の商材では、商談に至る難しさが違います。そして3つ目は、平均値には自社の顧客層が反映されていないことです。
代わりに使うのは、自社の過去の数字です。3か月前と比べて上がっているか、同じ条件のリストで話し方を変えたら動いたか——この比較なら、前提が揃っているので判断できます。
記録を数か月続けると、自社にとっての標準的な水準が見えてきます。それが自社の基準になります。世間の平均より、自社の実測のほうがはるかに使える数字です。
XtoXの現場から
私たち自身、外部の平均値を目標に置いて失敗したことがあります。ある支援の立ち上げ時に、記事で見かけた水準をそのまま目標として設定しました。ところが数か月経っても届きません。原因を探ると、参照した数字は問い合わせを分母にしたもので、こちらは架電件数を分母にしていました。前提が違う数字を追いかけていたわけです。目標を自社の実測に切り替えたところ、達成できる水準が見え、改善の議論も具体的になりました。最初に確かめるべきは、その数字がどう作られたのかでした。
変えるのは一度にひとつ
原因の場所が見えたら、打ち手を試します。ここでの原則は、一度に一つだけ変えることです。
リストの条件を変え、同時に話し方も変え、架電の時間帯も変えてしまうと、数字が動いたときに何が効いたのか分かりません。次に再現できないので、学習が積み上がりません。
変える順番としては、上流からがおすすめです。まずリストの条件を変えて数字を見ます。変わらなければ最初の一言を変え、それでも動かなければ提案の切り出し方を変えます。1つの変更につき、判断できる件数がたまるまで続けてください。数十件では偶然の範囲を超えません。
断られた理由の記録も、この作業を助けます。どこで断られたのかが残っていれば、次に変える場所が絞れます。聞き出し方は失注理由の聞き方で扱った考え方が、商談前の段階でも応用できます。
商談化率のチェックリスト
| 商談化率を見るときのチェックリスト(10項目) |
|---|
| □ 分母が何かを社内で1つに決めてある |
| □ 「商談」の定義を、確認できる事実で書いてある |
| □ 定義を営業全員が同じ言葉で説明できる |
| □ 分母の件数・分子の件数・率の3つを並べて見ている |
| □ 先月と数え方が変わっていないかを確認している |
| □ 流れを分けて、どこで落ちているかを見ている |
| □ 問い合わせへの連絡が当日か翌営業日になっている |
| □ 世間の平均値ではなく自社の過去と比べている |
| □ 改善のために変えるのは一度に一つにしている |
| □ 断られた段階と理由を記録する場所がある |
よくある質問
結局、目標は何%に置けばよいですか
最初の数か月は、率に目標を置かないことをおすすめします。まず定義を固めて記録を取り、自社の水準を把握してください。そのうえで、直近3か月の平均から少し上を目標にする形が現実的です。外部の平均値を目標にすると、達成できない数字を追い続けることになりかねません。
商談化率と成約率はどちらを優先しますか
商談の件数が足りていないなら商談化率、商談はあるのに受注に至らないなら成約率です。ただ、両方が同時に低い場合は、狙う相手の条件を疑ってください。合わない相手に届けていると、商談にもならず、なっても決まりません。上流から手をつけるほうが早く効きます。
ツールを入れれば計測できますか
記録は楽になりますが、定義は決めてくれません。分母と分子を何にするか、商談をどう数えるかは自社で決める必要があります。むしろ定義が曖昧なままツールを入れると、担当者ごとに入力の判断が違い、集計しても使えない数字になります。定義を先に決め、紙や表計算で回してみてから道具に移すほうが定着します。
件数が少なくて率が安定しません
月に数十件の規模だと、率は大きく振れます。この場合は月次ではなく、四半期でまとめて見てください。あるいは率ではなく件数の推移を主に見る形でも構いません。少ない件数の率に一喜一憂すると、偶然の変動を原因と勘違いします。
まとめ:分母を決めることから始める
商談化率は、分母を決めないと意味を持ちません。世間で語られる平均値は、分母が揃っていないため比較に使えません。まず自社の分母と分子を定義し、そこから記録を始めてください。
そして率だけでなく件数も並べて見ます。落ちている場所を分けて特定し、上流からひとつずつ変えていきます。比べる相手は他社ではなく、先月の自社です。
まずは、いま社内で使っている商談化率の分母が何かを確認してみてください。担当者ごとに答えが違ったなら、そこが最初に手を入れるところです。
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