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クリニックの集患|医療広告ガイドラインを守りながらできる情報発信の設計

  • BtoB
  • 医療/メディカル
監修
中尾 大也
株式会社XtoX 代表取締役社長 中尾 大也

大阪府出身。幼少期に祖父が経営する建設会社の廃業を経験し、企業存続と経営の本質に関心を持つ。新卒入社したベンチャー企業では初月にトップマーケティング賞を受賞。その後、大阪支社のコンサルティング責任者として事業拡大を牽引し、社員40名から300名規模への成長と東証グロース上場に貢献。上場後はグループ企業の執行役員を歴任。2023年に株式会社XtoXを創業し、中小企業のセールス・マーケティング支援に従事。

大阪府出身。幼少期に祖父が経営する建設会社の廃業を経験し、企業存続と経営の本質に関心を持つ。新卒入社したベンチャー企業では初月にトップマーケティング賞を受賞。その後、大阪支社のコンサルティング責任者として事業拡大を牽引し、社員40名から300名規模への成長と東証グロース上場に貢献。上場後はグループ企業の執行役員を歴任。2023年に株式会社XtoXを創業し、中小企業のセールス・マーケティング支援に従事。

「広告規制が厳しくて、何も発信できない」は誤解です。医療広告ガイドラインの基本と、規制の中でできる情報発信(診療方針の言語化・症状解説・Googleビジネスプロフィール)を、600社以上の戦略設計を行うXtoXが整理します。

・目次
    • 「広告規制が厳しくて、結局なにも発信できていません」
    • 「近隣に競合クリニックが増えて、新患が減ってきました」
    • 「口コミサイトの評価に、打つ手がありません」

    開業医の先生から、よくいただくご相談です。わかります。医療は、発信の一歩目がいちばん重い分野です。だからこそ、なにがだめで、なにができるのかを、さきに整理してしまいましょう。先に結論を言うと、「規制があるから発信できない」は誤解です。規制されているのはおもに“広告”であり、患者さんの選択を助ける情報提供の余地は広く残っています。600社以上の戦略設計のなかで医療分野のご支援から見えてきた、規制の枠のなかでできる集患の設計を、経路の整理から発信のしかた、院内の体制づくりまで順に説明していきます。

    なお、個別の表現の可否は最終的に所管の判断となるため、本記事は考えかたの整理としてお読みください。

    この記事でわかることは、つぎの4つです。

    • 医療広告ガイドラインで最低限おさえるべき、やってはいけない代表例
    • 新患が来る3つの経路の整理と、それぞれで整備すべきこと
    • 規制の枠のなかでできる発信(診療方針の言語化・症状解説・マップと口コミ対応)
    • 症状記事の書きかたと監修の流れ、発信前チェックリスト(7項目)

    やってはいけない代表例をおさえる

    できることの話に入るまえに、境界線をさきに確認しておきましょう。ここを知らないまま発信を始めることが、いちばんのリスクだからです。

    医療広告ガイドライン・注意すべき代表例
    NG・要注意 概要
    治療効果に関する体験談 患者の主観に基づく治療効果の体験談は広告に使えない
    ビフォーアフター写真 治療内容・費用・リスク等の詳細な説明を伴わないものは不可
    比較優良・誇大表現 「地域No.1」「最高の医療」等、他院との比較や根拠のない優良表現
    自由診療の記載 限定解除の要件(治療内容・費用・リスク・副作用等の明記)を満たす必要

    詳細は厚生労働省の「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)」を、かならず原文で確認してください。なお、この表は代表例であって、すべてではありません。判断に迷う表現が出てきたときに、そのつど相談できる先(行政の窓口や、規制にくわしい専門家)を決めておくと、発信が止まらずにすみますね。ここから先は、この枠のなかでできることの話です。

    新患が来る経路を3つに分ける

    「集患」とひとことで言っても、患者さんが来院にいたる経路はひとつではありません。整理すると、大きく3つに分かれます。症状や地域名での検索から自院サイトにたどり着く経路、「地域名×診療科」の検索でマップを見て選ぶ経路、そして家族や知人、ほかの医療機関からの紹介です。

    この3つは、整備するものがそれぞれ違います。検索の経路にはサイトの症状解説と診療方針、マップの経路にはGoogleビジネスプロフィールの正確さ、紹介の経路には受診した方の体験の質(待ち時間・説明のわかりやすさ)が効いてきます。自院の新患がいまどの経路から来ているかを、受付での「なにをご覧になって来られましたか」のひとことで集めておくと、力を入れる順番を数字で決められるようになります。聞き取りといっても、正確な統計でなくてかまいません。「検索」「マップ」「ご紹介」の3つに丸をつけるだけのメモ用紙で十分です。1か月ぶんたまるだけで、どの経路が細いのかが見えてきますよ。むずかしい仕組みはいりません。紙のメモで始めて、たまってきたら表計算に移すだけで十分です。

    診療方針を言語化する

    患者さんがクリニックを選ぶ理由は、治療効果の宣伝ではありません。「どんな考えかたで診てくれる先生か」「説明は丁寧か」「予約は取りやすいか」——これらは規制の対象になりにくく、かつ選択を左右する情報です。

    具体的には、院長の診療方針、初診の流れ、待ち時間への取り組み、バリアフリーや小児連れへの配慮などが書けます。効果を語らなくても、「ここなら安心して行けそうだ」という印象はつくれるのですね。書きあがったら、医療にくわしくないご家族やスタッフに読んでもらってください。「わかりにくい」と言われたところが、患者さんにとってのつまずきどころです。

    書きかたのコツは、患者さんの不安の順番に沿うことです。初めての方が知りたいのは、「予約はいるか」「なにを持っていくか」「どれくらい待つか」「駐車場はあるか」といった、受診の手前の不安です。初診の流れを、予約から会計まで順を追って写真つきで見せるページは、それだけで来院のハードルを下げてくれます。受付、待合室、診察室——院内のようすが見えるだけで、初めての方の「どんなところかわからない」という不安は、ずいぶん小さくなるものです。よくある質問のページも、じつは診療方針の一部だと言えます。「駐車場はありますか」「子どもを連れて行ってもいいですか」——電話でくり返し聞かれることを載せておくと、受付の負担も軽くできるでしょう。

    症状解説で検索の受け皿をつくる

    患者さんの行動は「症状の検索」から始まります。「頭痛が続く 何科」「子どもの発熱 目安」——この検索に、医師監修の正確な解説で答えるコンテンツは、地域の患者さんとの、はじめの接点になります。読み手のことばで書くこと——それだけで、伝わりかたは変わっていきます。

    書きかたの原則は、不安をあおらず、受診の目安を示すことです。「こんな症状がつづく場合はご相談ください」で結びます。診療圏の検索に答えつづけることが、開業医のコンテンツ戦略の中心になっていきます。ネタは、診察室のなかにあります。くり返し聞かれる質問、「もっと早く来ればよかった」と言われた場面、受診を迷ったという患者さんの声——そこで聞いた迷いこそ、つぎの記事の見出しになるのですね。ありがちなのは、お知らせと院長の日記ばかりが並ぶブログです。それらが悪いわけではありませんが、症状で検索する患者さんには届きません。届けたい相手の検索から逆算して、書く順番を決めてください。

    1本の構成にも型があります。症状の一般的な説明、考えられる受診のタイミング、当院での初診の流れ——この順で、1記事1症状にしぼって書いてください。医療は誤情報の影響が大きい分野なので、量産よりも、監修を通した正確な記事を月1本ずつ積み上げるほうが、結果として信頼につながります。監修した医師の氏名を記事に明記することも、読者と検索エンジンの両方への信頼の材料になります。読みやすさにも気を配ってください。専門用語には、ひとこと説明を添えます。読み手は、医療の知識がないまま、不安のなかで読んでいるからです。

    公開までの流れは、下書き、医師の内容確認、規制観点の確認、公開の4段でそろえます。この順番を一度決めてしまえば、発信は「毎回悩む仕事」から「流れに乗せる仕事」に変わっていきます。

    マップと口コミ対応を整える

    「地域名×診療科」の検索で最初に見られるのは、マップです。Googleビジネスプロフィールの診療時間・写真・設備情報を正確に保つだけで、機会損失は減っていきます。とくに、祝日や臨時休診の反映漏れは「行ったら閉まっていた」という体験に直結するので、更新の担当をひとり決めておいてください。写真もあわせて整えましょう。外観の写真は「見つけやすさ」に直結します。建物の入口が写っている1枚があるだけで、初めての方が迷わずにたどり着けるようになりますね。

    口コミへの対応は、返信ルールをさきに決めておくことが大切です。個別の症状への言及はさけて、受診への感謝と一般的な改善の姿勢を丁寧に返します。低評価への感情的な反論は、それ自体が新しい患者さんに読まれてしまいます。返信は、院長がすべて書く必要はありません。型を決めて、確認だけ院長が行う形にすれば、負担なくつづけられます。なお、口コミの操作(謝礼と引き換えの投稿依頼など)は、規制・規約の両面から行わないでください。

    XtoXの現場から

    医療分野のご支援でよくあるのが、「ホームページを作り直したのに、新患が増えない」というご相談です。拝見すると、サイトはきれいなのに、マップの診療時間が古いまま、予約の手段が平日日中の電話だけ、症状で検索しても自院のページが出てこない——つまり、経路のどこかが切れているケースがほとんどでした。集患は、サイト単体ではなく経路の点検から始めるものだと、私たちは考えています。

    再診とかかりつけ化も集患のうち

    新患の獲得だけが集患ではありません。一度受診した患者さんに、必要なタイミングで思い出してもらうことも、同じくらい大切です。定期の検査や予防接種の時期のご案内、季節の健康情報の院内掲示やサイトでの発信——同意を得た連絡手段で、受診の目安を届ける仕組みを持っているクリニックは、新患への依存度が下がっていきます。こうした案内は、押しつけではなく思い出す手助けです。「そろそろ時期ですよ」と教えてもらえることを、ありがたいと受け取る患者さんは少なくありません。

    そして、かかりつけの患者さんの体験は、そのまま紹介の経路につながります。待ち時間への配慮、説明のわかりやすさ、予約の取りやすさ——院内の体験の質こそが、広告ではつくれない、いちばん強い発信だと言えるでしょう。

    XtoXの現場から

    医療分野のご支援で私たちが最初に確認するのは、施策のアイデアではなく「表現のチェック体制」です。担当者がグレーな表現に気づけないまま公開し、あとから指摘を受けて全面修正——という手戻りが、この分野ではもっとも高くつきます。発信を始めるまえに、「公開前に規制観点で確認する人と手順」を決めておいてください。地味ですが、これが医療マーケティングの土台です。実際、本記事自体も公開前に規制観点の監修を通しています。

    よくある質問

    Q1. SNSはやるべきですか?

    院内の雰囲気や健康情報の発信として有効ですが、SNSも広告規制の対象になり得ます。運用ルール(載せてよい内容・監修フロー)を決めてから始めてください。

    Q2. ポータルサイト(予約サイト)依存から抜けたいのですが

    すぐにやめるのではなく、自院サイト・マップ経由の予約比率を測りながら、段階的に依存度を下げるのが現実的です。受け皿(サイトの予約導線・症状コンテンツ)が先で、離脱はあとになります。

    Q3. 自由診療の集患にも、この記事の考えかたは使えますか?

    基本の考えかたは共通ですが、自由診療は限定解除の要件や費用・リスク表記など、規制上の論点が一段増えます。個別に規制観点の確認をはさむことを、強くおすすめしたいところです。

    Q4. 効果が出るまで、どれくらいかかりますか?

    正直に言えば、検索とマップの整備は積み上げ型なので、月単位の時間がかかります。ただし、マップの情報修正や予約導線の改善のように、直したその日から機会損失が減るものも含まれています。早く効くものと、じっくり効くものを分けて計画してください。あせらず、しかし止めずに——これが医療の発信のいちばんの近道だと、私たちは考えています。

    Q5. 人手がありません。なにから始めるべきですか?

    順番は、規制観点のチェック体制、マップの情報整備、診療方針と初診の流れの言語化、症状解説——この順です。前の2つは費用がほとんどかからず、院内の30分の話し合いと数時間の作業で始められます。

    まとめ:発信前のチェックリスト

    クリニックの集患は、規制を理由に止まるものではなく、経路の点検と、規制の枠のなかの誠実な発信で設計できるものです。最後に、発信のまえに確認できるリストを置いておきます。1つでも空欄があれば、そこが最初の改善点です。むずかしいところから始める必要はありません。まずは、マップの診療時間が合っているかを、きょう確かめるところからで大丈夫でしょう。小さくても、きょう動いたぶんだけ、あしたの機会損失は減っていくはずです。

    □ 公開前に規制観点で確認する担当と手順を決めたか
    □ 新患がどの経路(検索・マップ・紹介)から来ているか、受付で聞き取れているか
    □ 診療方針・初診の流れがサイトに言語化されているか
    □ 診療圏の症状検索に答えるコンテンツ計画があるか(医師監修・監修者名の明記)
    □ Googleビジネスプロフィールの情報は正確・最新か(更新担当を決めたか)
    □ 口コミへの返信ルールを決めたか
    □ 再診・かかりつけ化のご案内(同意を得た連絡・院内掲示)の仕組みがあるか

    関連記事:ホームページからの問い合わせを増やすにはペルソナとは

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