物流会社の荷主開拓|安値受注に頼らず「2社目・BCP枠」を取るテレアポの型
大阪府出身。幼少期に祖父が経営する建設会社の廃業を経験し、企業存続と経営の本質に関心を持つ。新卒入社したベンチャー企業では初月にトップマーケティング賞を受賞。その後、大阪支社のコンサルティング責任者として事業拡大を牽引し、社員40名から300名規模への成長と東証グロース上場に貢献。上場後はグループ企業の執行役員を歴任。2023年に株式会社XtoXを創業し、中小企業のセールス・マーケティング支援に従事。
大阪府出身。幼少期に祖父が経営する建設会社の廃業を経験し、企業存続と経営の本質に関心を持つ。新卒入社したベンチャー企業では初月にトップマーケティング賞を受賞。その後、大阪支社のコンサルティング責任者として事業拡大を牽引し、社員40名から300名規模への成長と東証グロース上場に貢献。上場後はグループ企業の執行役員を歴任。2023年に株式会社XtoXを創業し、中小企業のセールス・マーケティング支援に従事。
ドライバー不足で輸送力が売り手市場になった今こそ、物流会社が荷主を選ぶ側に回るチャンスです。安値受注に頼らない「2社目・BCP枠」の開拓と、価格ではなく持続可能な輸送体制で選ばれる訴求を、600社以上の戦略設計を行うXtoXが解説します。
- 「運賃を下げないと、新規の荷主が取れません」
- 「安値で取った荷主ばかりで、燃料が上がっても値上げを言い出せません」
- 「帰り便が空のまま走っています。もったいないとわかってはいるのですが」
物流会社の経営者から、くり返しいただくご相談です。ドライバーの時間外労働規制、いわゆる「2024年問題」以降、輸送力の需給は構造的に変わりました。荷主側の調査でも、輸送力の確保・物流網の見直しは経営課題として語られるようになっています。
つまりいまは、物流会社が「選ばれる側」から「選ぶ側」に回れる、数十年に一度の局面です。にもかかわらず、開拓の現場ではいまも「他社より安くやります」の営業がつづいています。先に答えを言えば、いまの荷主開拓は安値の提示ではなく、荷主のリスクに答える「2社目・BCP枠」の提案で設計するのが正解です。600社以上の戦略設計で見えてきた型を、リストのつくりかたからトーク、1便目の動きかたまで順に説明していきます。
この記事でわかることは、つぎの4つです。
- 荷主の恐怖が「運賃」から「輸送の空白」へ移った構造と、2社目・BCP枠の考えかた
- 「安くやります」と言わないテレアポの型(受付・担当者・締めの3ステップ)
- 帰り便から逆算するリストのつくりかたと、最初の1便を商談資料にする動きかた
- 担当者が社内で説明できる訴求材料と、荷主開拓チェックリスト(7項目)
荷主がいま本当に恐れていること
荷主の恐怖は、「運賃が上がること」から「運んでもらえなくなること」へ移りつつあります。既存の運送会社が便を減らす、繁忙期に断られる、ドライバーが確保できない——輸送の空白は、荷主にとって売上の空白そのものだからです。
この構造変化があるので、製造業の記事で説明した「2社目枠」の考えかたが、物流ではそのまま使えます。既存の取引を奪いにいくのではなく、「万一のときの2社目・繁忙期の補完枠」として入るのですね。荷主の恐怖に、正面から答える入りかたです。
安値で入る営業との違いは、そのあとの関係に出ます。価格で選ばれた会社は、価格で切られます。備えとして選ばれた会社は、荷主が困った瞬間に電話が来る位置に立てます。どちらの位置を取りにいくかを、電話をかけるまえに決めておきましょう。なお、この需給の変化は一時的な波ではありません。ドライバーの高齢化と担い手の不足はつづいており、荷主側の「運んでもらえない不安」は、これからむしろ強まっていくと見られます。だからこそ、いま取った2社目の位置は、長く効く資産になっていきます。
「安くやります」と言わない型
型の核心は、荷主の恐怖に合わせて提案の中身を変えることです。運賃の話は、こちらからは出さず、聞かれてから答えます。まず、入りかたの違いを一覧で見てください。
| 安値型(従来) | 2社目・BCP型 |
|---|---|
| 「現状より安い運賃でお見積りします」→価格比較の候補の1社になり、値上げ交渉ができない関係が始まる | 「今のお取引を変える話ではありません。繁忙期や万一の際の2社目の枠として、貴社の路線・荷姿で対応できる体制をご案内したい」→リスク対策の相談相手になる |
狙いは、すぐの切り替えではありません。「困った瞬間に電話が来る位置」です。ここからは、電話の流れを3つのステップに分けて説明します。
ステップ1:受付を通る用件の伝えかた
受付の方は、「物流のご提案」という言葉を聞いた時点で断るよう指示されていることが多いですね。用件は、相手の業務の言葉に置きかえます。「◯◯から△△への路線の輸送体制の件で、物流のご担当の方にお取り次ぎいただけますか」——路線名まで具体化するほど、業務の連絡として聞こえ、通る確率が変わっていきます。なお、断られたときに粘る必要はありません。「またの機会にお願いします」と引いて、つぎの1社にかけるほうが、全体の成果は伸びていきますね。
ステップ2:担当者に話す最初の30秒
担当者につながったら、最初の30秒で「切り替えの営業ではない」ことを先に伝えます。さきほどの表の右側のトークです。そのうえで、聞くことは2つにしぼりましょう。繁忙期や急な増便のときにいまの体制で足りているか、そして万一のときの代替の便を決めてあるか——この2つへの答えかたで、相手の困りごとの近さがおおよそわかります。
ステップ3:締めはスポット1件の許可
締めで定期便の商談を迫ると、せっかくの入りかたが崩れてしまいます。求めるのは「繁忙期やお困りの際に、スポット1件からお声がけいただく許可」と、体制資料をお送りする許可だけです。物流の営業は、資料よりも実際の1便が信頼をつくります。その1便への入口さえ開けば、初回の電話としては十分でしょう。なお、スポットの声がかかったときに本当に受けられるかどうか、運行管理とさきにすり合わせておいてください。せっかくの1件を断ってしまうと、位置づくりが振り出しに戻ってしまいます。
帰り便から逆算するリストづくり
かける先のリストは、荷主の一覧から選ぶのではなく、自社の帰り便・空き車両の路線から逆算するのが最短です。「◯◯から△△のあいだで、週に数便の余力がある」とわかっているなら、その路線沿いに出荷拠点を持つ荷主が最優先のリストになります。稼働率の改善と開拓を、同時に進める考えかたですね。
路線でしぼったら、つぎは荷物との相性でしぼります。自社の車両・設備で品質を保てる荷姿(温度帯、重量物、精密品など)と、繁忙期の波が自社の閑散期と重なる業種——この2つの条件を満たす荷主は、こちらにとっても「受けて利益が出る相手」になります。沿線の荷主は、工業団地の企業一覧、物流施設の入居企業、業界紙や求人情報からたどれるでしょう。1日で完璧なリストをつくろうとせず、まず20社から30社の小さなリストで電話を始め、反応を見ながら足していくほうが、結果として早く形になります。また、リストはつくって終わりではありません。かけた結果をひとことメモで残しておくと、半年後のかけなおしのときに、まえの会話のつづきから始められます。リストづくりの基本の考えかたは営業リストはどう作る?でも説明しています。
最初の1便を商談資料にする
スポット1件の声がかかったら、そこからが本番です。物流の商談資料は、提案書ではなく実際の1便——時間厳守、事故ゼロ、連絡の速さという品質そのものが、定期便の検討候補に上がるための材料になります。
1便を資料に変えるには、報告をセットにします。到着の連絡、荷扱いの状況、気づいた点の共有——運んで終わりにせず、「この会社は連絡が速い」という記憶を残してください。報告の型は、難しいものではありません。「◯時に着車し、◯時に納品を終えました。荷受けの方から◯◯というお話がありました」——この3行を、その日のうちに送るだけです。納品後には、お礼とあわせて体制資料を送り、繁忙期のまえに一度だけ近況をうかがう連絡を入れます。この積み重ねが、「困った瞬間に電話が来る位置」を現実のものにしていきます。忘れないでいただきたいのは、荷主の担当者もまた、社内で「新しい会社を使ってみてどうだったか」を聞かれる立場にあるということです。こちらの報告は、そのまま担当者が上司に見せられる材料になります。そう考えると、報告の一本一本にも意味が出てきますね。
支援の現場でよく見るのが、せっかくスポットの声がかかったのに、「運んで、請求書を送って、終わり」になっているケースです。荷主の側から見ると、初回の1便は「この会社に任せて大丈夫か」の試験でもあります。到着報告の一本、翌日のお礼の一通——手間としてはわずかでも、これをやる会社とやらない会社の差は、つぎの声がかかる確率にはっきり出てきます。1便目の価値を、運賃の金額で測らないでください。
訴求は「安さ」ではなく「続けられる体制」
荷主の担当者が社内で説明しやすい材料を渡すことが、訴求設計の中心です。担当者は、自分の言葉ではなく御社の材料で、上司や工場を説得します。渡すべき材料は4つです。
| 材料 | 担当者が社内で言えること |
|---|---|
| ドライバーの採用・定着への取り組み | 「10年後も運んでくれる会社です」 |
| 法令順守の体制 | 「コンプライアンス面の説明が通ります」 |
| 車両と拠点の実数 | 「規模の裏づけがあり、繁忙期も頼れます」 |
| 繁忙期・突発対応の実績 | 「万一のとき、実際に動いてくれた会社です」 |
材料は、数字と固有名詞の事実の形で書いてください。「安全教育に力を入れています」ではなく、「毎月◯日に全ドライバーで安全会議を開いています」のように書くほど、担当者はそのまま社内で使えます。この4つを会社案内と提案書に落とし込むと、「安い会社」ではなく「続けられる会社」として語られるようになります。逆に、この材料がないまま安値だけで入ると、値上げを言い出せない関係が始まってしまうのですね。
物流会社のご支援で歯がゆいのが、「安値で取った荷主ほど、値上げ交渉ができない」という悪循環です。燃料が上がっても言い出せず、利益が薄いまま台数だけ増えていきます。ですから、私たちが開拓の設計に入るときは、最初に「受けない荷主の条件」を決めることから始めます。たとえば、待機時間が常態化している、付帯作業を無償で求められる、支払いの条件が自社の資金繰りに合わない——こうした条件を先に決めておくと、現場が迷いません。誰から取るかと同じくらい、誰から取らないかが利益率を決めます。開拓とは、選ぶことでもあるのです。
荷主開拓チェックリスト(7項目)
ここまでの内容を、電話や商談のまえに確認できるリストにまとめます。1つでも空欄があれば、そこが最初の改善点です。
| □ リストを帰り便・空き車両の路線から逆算してつくってあるか |
| □ 荷姿・繁忙期の波の相性で、リストをさらにしぼってあるか |
| □ トークの軸が「2社目・BCP枠」になっているか(安値の提案になっていないか) |
| □ 受付への用件を「◯◯路線の輸送体制の件」まで具体化してあるか |
| □ 締めで求めるものを「スポット1件の許可」にしぼってあるか |
| □ 1便目の報告(到着連絡・お礼・体制資料)の段取りが決まっているか |
| □ 「受けない荷主の条件」をさきに決めてあるか |
よくある質問
Q1. スポットから定期便になるまで、どれくらいかかりますか?
正直に言えば、相手の既存契約の切り替え時期しだいなので、こちらでは決められません。だからこそ、2社目の位置で待てる設計にしておくことが大切です。品質で記憶に残っていれば、既存の便に空白が出たその日に、声がかかります。目安の期間をお約束できないことを正直にお伝えするのも、2社目の営業の誠実さの一部だと考えています。
Q2. 誰宛てに電話すべきですか?
物流部・購買部があればその責任者、中堅以下の会社なら経営者か工場長です。窓口の担当者しかつながらない場合も、「繁忙期の体制をどうされているか」の一問だけは聞いてみてください。困りごとが実在すれば、上へ話がつながっていきます。
Q3. この型が向かないケースはありますか?
あります。ドライバーと車両に余力がない状態での開拓は、既存荷主への品質低下を招くので本末転倒でしょう。その場合は、採用・定着の手当てが先になります。営業と採用は、物流業では同じ問題の両面です。
Q4. 相見積りで安値の同業とぶつかったら、どうすべきですか?
価格で追いかけないことです。「運賃では負けます。そのかわり、繁忙期に断らない体制と、連絡の速さでお役に立てます」と、比較の物差しそのものを体制に変えて渡してください。値下げで返してしまうと、そのさきもずっと値下げで戦うことになります。それでも価格だけで決まる荷主なら、受けない条件に照らして見送る判断も、開拓のうちです。
Q5. 車両10台ほどの規模でも、この型は使えますか?
使えます。むしろ規模が小さいほど、路線と荷姿をしぼる効果が出やすいですね。全方位に営業する体力がないからこそ、「この路線・この荷姿なら誰にも負けない」という一点で、2社目の枠を取りにいってください。
まとめ:荷主のリスクに答えて選ぶ側へ
輸送力が価値になったいま、物流会社の開拓は、安値の提示ではなく荷主のリスクに答える提案に変わりました。2社目・BCP枠で入り、最初の1便を商談資料にし、受けない条件をさきに決める——この3つで、選ばれる側から選ぶ側へ回れます。むずかしいことを、いきなり全部やる必要はありません。まずは帰り便の路線をひとつ選び、そこにいる20社へ電話をかけてみるところから始めてみてください。既存の運送会社が「運べません」と言ったその日、荷主がまっさきに思い出すのは御社でしょうか。
関連記事:製造業の新規開拓/営業リストはどう作る?
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