お役立ち情報

個別相談・商談の成約率を上げる方法|「主役はお客様、進行役は営業」の商談術

  • BtoB
監修
中尾 大也
株式会社XtoX 代表取締役社長 中尾 大也

大阪府出身。幼少期に祖父が経営する建設会社の廃業を経験し、企業存続と経営の本質に関心を持つ。新卒入社したベンチャー企業では初月にトップマーケティング賞を受賞。その後、大阪支社のコンサルティング責任者として事業拡大を牽引し、社員40名から300名規模への成長と東証グロース上場に貢献。上場後はグループ企業の執行役員を歴任。2023年に株式会社XtoXを創業し、中小企業のセールス・マーケティング支援に従事。

大阪府出身。幼少期に祖父が経営する建設会社の廃業を経験し、企業存続と経営の本質に関心を持つ。新卒入社したベンチャー企業では初月にトップマーケティング賞を受賞。その後、大阪支社のコンサルティング責任者として事業拡大を牽引し、社員40名から300名規模への成長と東証グロース上場に貢献。上場後はグループ企業の執行役員を歴任。2023年に株式会社XtoXを創業し、中小企業のセールス・マーケティング支援に従事。

「聞くが8割」では商談は決まりません。成果の出る商談は、司会者が番組を仕切るように営業が進行役を務め、主役のお客様が「話を聞いてもらえた」と感じています。購買心理の7つの段階で成約へ導く商談術を、600社以上の戦略設計を行うXtoXが解説します。

・目次

    「丁寧にヒアリングしているのに、『検討します』で終わってしまう」

    「相手の話をよく聞け、と教わったとおりにやって、成約率が上がらない」

    「クロージングで押すべきか引くべきか、いつも迷ったまま商談が終わる」

    営業の世界には、「ヒアリングが7割」「とにかく聞け」という定説があります。もっともらしく聞こえますし、傾聴が大切なのは事実です。ただ、正直に言えば、この定説を額面どおりに実行して成約率が上がった商談を、私たちはほとんど見たことがありません。

    600社以上の戦略設計と、営業支援の現場で商談に同席し続けてきた実感を、先にお伝えします。成果の出る商談では、実際に話している割合は営業側が7割です。相手の話をただ聞いて待つのではなく、営業側がある程度誘導しながら、成約という共通のゴールに向けて商談を導いています。8割聞いているだけの商談は、感じは良いのに、決まりません。

    では、聞くことに意味がないのかと言えば、まったく逆です。ここに商談の核心があります。イメージしていただきたいのは、テレビ番組の司会者です。上手な司会者は、番組の段取りを仕切り、話題を振り、実はかなりの時間しゃべっています。それでも番組の主役はあくまでゲストで、ゲストは「今日は気持ちよく話せた」と感じて帰っていきます。成果の出る商談の営業がやっているのは、これと同じことです。主役はお客様、進行役は営業。営業が7割話していても、お客様が「自分の話を聞いてもらえた」「わかってもらえた」と感じる商談は作れます。この進行役の技術を身につけられるかどうかが、成約率を分けるのです。

    この記事は、私たちが社内のフィールドセールスガイドラインとして運用し、クライアント企業の商談・個別相談にも移植してきた「進行役の型」を、公開できる範囲で体系化したものです。読み終えると、次のものが手に入ります。

    ・ 商談の背骨になる「購買心理の7つの段階」と、段階別にやるべきこと

    ・ お客様に気持ちよく話してもらう「進行役」のヒアリング技術

    ・ 本当の懸念を引き出すテストクロージングと、成約へ導くクロージングの順番

    ・ 次の商談からそのまま使えるチェックリスト(10項目)

    前提:なぜ「聞くだけ」の商談は決まらないのか

    最初に、聞く一辺倒の商談がなぜ決まらないのかを確認しておきましょう。理由は、お客様の側にあります。多くのお客様は、自分の課題を明確に言語化できていません。「何となくうまくいっていない」「もっと良いやり方があるのでは」と感じてはいても、どこが問題で、何を解決すべきかまでは整理できていない——これが普通の状態です。

    整理できていない相手に「課題は何ですか」「ご要望をお聞かせください」と聞き続けるとどうなるか。出てくるのは表面的な要望だけで、商談は御用聞きになります。私たちは社内で「御用聞き営業が一番だめだ」と言い続けていますが、それは態度の問題ではありません。言われたことを聞いて持ち帰るだけの営業は、相手が言語化できている範囲——つまり課題の一部——しか扱えないからです。宿題を持ち帰り、見積もりを出し、「検討します」と言われる——聞くだけの商談の典型的な結末です。

    一方で、話しすぎの商談が決まらないのも事実です。ここで区別しなければならないのが、「説明」と「誘導」の違いになります。決まらない商談の7割は、商品説明で埋まっています。決まる商談の7割は、相手の状況を言葉にする手伝い、事例の提示、未来のイメージづくり、合意の確認——つまり、相手の頭の中を前へ進める働きかけで埋まっています。同じ「営業が話す7割」でも、中身がまったく違うのです。この記事で解説するのは、後者の7割の作り方です。

    背骨:購買心理の7つの段階——相手の現在地を見極めて導く

    導く、と言うからには、地図が要ります。私たちが社内ガイドラインの土台に置いているのが、購買心理の7つの段階です。お客様が「申し込みます」と決めるまでに、頭の中は次の順番で進みます。

    図解:購買心理の7つの段階と、商談でのアクション
    段階 相手の状態 営業がやること
    ①関心 興味はあるが、行動は起こしていない 注意を惹きつける(商談前の接点づくり)
    ②興味 情報を得ようと行動している(商談に応じた状態) 信頼関係を作り、興味を高める
    ③連想 自分が使ったらどうなるか、想像し始めている 導入後のイメージを事例で具体化する
    ④欲望 欲しいが、自分に最適か気になっている 懸念に答え、安心感を与える
    ⑤比較 他にもっと良いものがないか、気にしている 相手が何に価値を感じているかを見極め、その価値で選ばれる理由を示す
    ⑥信念 「損はしないだろう」と自己説得している リスクとその回避策を正直に伝え、決断を後押しする
    ⑦決意 申し込む意思を固め、最終確認をしている 契約の手続きと注意事項を丁寧に案内する

    段階は飛ばせません。「連想」ができていない相手に「比較」の話をしても届かないのです

    この7つの段階が教えてくれることは2つあります。1つは、段階は飛ばせないということ。導入後のイメージ(連想)ができていない相手に、他社との違い(比較)や料金の話をしても響きません。お客様が「迷っている」「決められない」ように見えるとき、実際に起きているのは、どこかの段階の飛ばしすぎです。

    もう1つは、営業の仕事の定義です。営業の仕事とは、商品を説明することではなく、相手がいまどの段階にいるかを見極め、次の段階へ進める働きかけをすることです。質問の出方、口数の変化、料金への言及——相手のサインから現在地を読み、その段階に合った話だけをしていきます。「導く」とは、この地図の上を一段ずつ一緒に進むことを指します。行き先は成約——ただしそれは営業側の都合のゴールではなく、相手の課題解決が始まる地点としての、共通のゴールです。

    技術1:ヒアリングは「話させる」のではなく「話しやすくする」

    ここから実践に入ります。まず、進行役の最初の仕事——お客様に気持ちよく話してもらうヒアリングです。冒頭で述べたとおり、課題を言語化できていない相手に、裸の質問をぶつけても話は出てきません。「課題は何ですか」は、相手に丸投げする質問です。私たちが使うのは、事例と数字で足場を組んでから聞く質問です。

    たとえば、「新規営業にどれくらい時間を使えていますか」と裸で聞く代わりに、こう聞きます。「同業のお客様では、既存対応に時間を取られて、新規営業には2割ほどしか時間を使えていないというケースが多いのですが、御社ではいかがですか」。事例と数字が入った瞬間、相手は自社の状況を具体的に思い浮かべられるようになり、「うちはもっと少ないかもしれない」「うちの場合は…」と、言葉が出始めます。質問の形をした情報提供——これが、話しやすくする技術の基本形です。

    同じ理由で、他社の話(第三者の事例)はヒアリングの潤滑油になります。「◯◯業の、御社と近い規模の会社をご支援しているのですが、そこでは△△というお悩みが出ていました。近い状況はありますか」。人は、自分の弱みを初対面の相手に直接語ることには抵抗がありますが、「他社もそうなのか」とわかった瞬間、口が開きます。良い司会者がゲストの話を引き出すために話題を振るように、営業が話す時間の多くは、この「足場づくり」に使われるべきなのです。

    もう1つ、ヒアリングで必ずやるべきなのが、未来を想像させることです。現状の確認だけで終わるヒアリングは、課題の深刻さが伝わらないまま提案に入ることになります。2つの未来を、質問で見せます。良い未来——「もしこの部分が解決したら、事業としては何が変わりそうですか」。そして、このままの未来——「今のやり方のままだと、1〜2年先に困りそうなことはありませんか」。世の中の変化——人手不足、コストの上昇、業界構造の変化——を添えて聞くのも有効です。現状維持が実は現状維持ではないことに相手自身が気づいたとき、課題は「いつかやること」から「いま考えること」に変わります。

    そして、要望はできる限りたくさん引き出してください。目の前の1つの課題だけでなく、「他に伸ばしたい事業はありますか」「こういうこともできたら面白いと思いませんか」と、相手のやりたいことを広げていきます。要望が広がるほど、提案は「費用がいくらか」の話から「何を一緒にやるか」の話に変わり、値段の細かい比較に落ちにくくなります。相手にとっても、自分の構想を語る時間ほど「話せた」と感じる時間はありません。

    XtoXの現場から:丁寧に聞いて、宿題だけ持ち帰っていた話

    営業支援のご相談で商談に同席すると、ヒアリングが「要望の書き取り」になっているケースによく出会います。相手の言うことを丁寧にメモし、「では見積もりをお持ちします」と宿題を持ち帰る、という進め方です。感じの良い商談ですが、相手の頭の中は1ミリも前に進んでいません。あるご支援では、同じ担当者の商談に「事例つきの質問」と「2つの未来を見せる質問」を台本として組み込んだところ、ヒアリングの時間はほぼ同じまま、相手から出てくる言葉の量と深さが変わり、提案前の温度がまるで違うものになりました。聞く姿勢ではなく、聞き方の設計の問題だったのです。

    技術2:提案は「相手の悩みに紐づけて」語る——資料は小道具、会話が主役

    ヒアリングで足場ができたら、提案です。ここでの原則は、商品を単体で説明しないこと。機能や実績を順番に見せていく説明は、相手にとって「自分の話」になりません。すべての説明を、直前に相手が語った悩み・要望に紐づけてから話します。「先ほど、◯◯が課題だとおっしゃっていましたが、まさにその部分を解決するのがこの仕組みです」。この紐づけの一言があるかないかで、同じ内容の伝わり方が変わります。

    資料の扱い方にも原則があります。資料は営業のためのカンペではなく、相手の理解を助ける小道具です。スライドを1枚ずつ順番に読み上げる提案は、会話を殺します。相手の関心が強い部分だけを開き、あとは会話で進めます。むしろ、話が盛り上がらないときにこそ資料を開いて会社の背景や事例から入り直す——資料とは、そういう使い方をする道具です。

    説明の途中では、枕詞を活用してください。「前回お伝えしたとおり」「すでにご理解いただいているかと思いますが」。相手の理解を前提に置く枕詞は、話を前へ進めながら、相手に「わかっている人」として扱われている感覚を渡します。逆に、質問を投げるときは、ふわっと聞かないこと。「何かご質問はありますか」ではなく、「進めるにあたって気になる点や、詳しく知りたい点はどこですか」と、答えの出やすい形で聞きます。

    技術3:テストクロージング——「懸念はありますか」では、本当の懸念は出ない

    提案の後、多くの営業がこう聞きます。「ここまでで、ご不明点や懸念はありますか」。そして相手はこう答えます。「特にないです」。このやり取り、一見丁寧な確認に見えて、実はほとんど意味がありません。「わからないことを質問するのは恥ずかしい」と感じる相手は多く、懸念を聞かれて素直に懸念を語る人は少数派だからです。「特にない」の多くは、「ない」ではなく「言っていない」なのです。

    本当の懸念を引き出す方法は1つしかありません。テストクロージング——つまり、前に進む前提の質問を投げることです。「ここまで全体像をご説明しましたが、こういう取り組みを御社に取り入れたら、面白いと思われますか」「どうでしょう、一度やってみたいと感じますか」。前に進むかどうかを問われて初めて、人は本気で自分の中を確認し、「イメージは湧いたのですが、あとは正直、費用面ですね」「1つ気になるのは体制でして」と、本物の懸念を口にします。懸念とは、聞き出すものではなく、テストクロージングによって「出てくる」ものだと覚えてください。

    テストクロージングには、もう1つの働きがあります。合意の積み上げです。内容に「良いと思う」の合意を握り、始めるならいつ頃が良いかの感触を握り、「他に気になる点がなければ、あとは条件次第で進められそうか」を握る——内容→時期→条件の順に小さな合意を積んでいくと、最後のクロージングは「決断を迫る場」ではなく、「積み上がった合意を確認する場」になります。相手にとっても、自分で答えてきた合意の延長線上にあるため、決断の重さが違います。

    XtoXの現場から:「ご不明点ありますか」で流れ続けていた話

    成約率改善のご相談で商談録画を拝見すると、提案の出来は良いのに、確認が「ご不明点ありますか」「特にないです」「では、ご検討ください」で終わっている商談が本当に多くあります。あるケースでは、この確認をテストクロージング——「一度やってみたいと感じられますか」——に差し替えただけで、それまで商談後に消えていた懸念(費用・社内の合意・時期)が商談中に出てくるようになりました。懸念が商談の中で出れば、その場で答えられます。商談の後に出れば、答える機会はもうありません。確認の一言の違いが、成約率の違いの正体だったのです。

    技術4:クロージング——順番を守り、期日を切る

    仕上げのクロージングで大切なのは、強さではなく順番です。私たちが社内で徹底している順番は、次のとおりです。まず、内容の合意を確認します。「実際、内容としては問題なさそうでしょうか」。次に、判断のスタイルを聞きます。「良いと思われたとき、進めるかどうかのご判断は早いほうですか」。そして最後に、期日のある提案を出します。「でしたら——実は、◯日までにお申し込みいただいた場合の特別なご案内がありまして」。

    この順番には理由があります。内容の合意を取る前に期日や特典の話をすると、それは単なる「営業側の都合で早く決めてほしい」という話になり、逆効果です。内容に合意し、自分は判断が早いと言った後だからこそ、期日のある提案は「背中を押してくれる情報」として受け取られます。もし最初の「内容は問題なさそうか」でつまずくなら、相手はまだ連想や欲望の段階にいるということです。クロージングを続けるのではなく、ヒアリングと紐づけに戻ってください。段階を飛ばした強さは、押し売りにしかなりません。

    期日については、はっきり言い切ります。すべての商談で、必ず期日を切ってください。「ゆっくりご検討ください」は、一見誠実に聞こえて、実は不誠実です。検討が長引くほど、相手は条件の良い枠を逃し、課題解決の開始は後ろ倒しになり、検討の熱は日ごとに冷めていきます。早くご判断いただくことこそが、実は最大の「相手の立場に立った行動」である——私たちはそう考えていますし、そう考えられる根拠(開始時期・枠・条件)を、嘘なく用意しておくことが営業側の仕事です。

    そして、押すことをためらう方に、社内で言い続けている言葉を贈ります。100%相手の立場に立って話しているなら、どれだけ強く勧めても、やりすぎることはありません。クロージングが嫌がられるのは、強いからではなく、営業側の都合——今月の数字、自分の成績——が透けて見えるからです。逆に、この取り組みが相手の事業に本当に効くと確信し、その根拠を持っているなら、「やりましょう。間違いないと思います」と堂々と言い切ることは、押し付けではなく専門家の責任です。自分の提案に疑念が残っているうちは、その疑念を潰すのが先です。疑念のある営業から買うお客様はいません。

    それでも当日に決まらないことはあります。そのときのルールは1つ、次の判断の場を、その場で・近い日程で確定することです。「持ち帰って検討します」に「かしこまりました、ではまた」と返した商談は、高い確率で消えます。「では、追加でご案内できる内容もありますので、明日か明後日の10分だけ、お電話のお時間をいただけますか」。判断の場を3営業日以内に切る——ここまでがクロージングです。日程を相手に委ねず、こちらから具体的な候補を出すことも忘れないでください。

    技術5:懸念には、第三者の物語で答える

    クロージングの前後で出てくる懸念——「今はタイミングではない」「うちの規模でできるか不安」——への答え方にも、型があります。正面から「大丈夫です」と説得するのではなく、第三者の物語で答えるのです。「◯◯県で、御社より少し小さい規模でされている会社があるのですが、同じご不安をお持ちでした。実際に始めてみると——」。

    人は、自分に向けられた説得には身構えますが、他人の物語は素直に聞けます。そして物語の中の会社に自分を重ね、「うちでもできるかもしれない」と、自分で結論を出します。営業が話しているのに、相手の頭の中では相手自身が考えている——本記事で繰り返してきた「主役はお客様、進行役は営業」の構造は、懸念対応の場面でも同じです。使う事例は、当然ながら実在のもの、そして守秘の範囲を守ったものに限ります。作り話は、一度ばれた瞬間にすべてを失います。

    型を組織に:準備・ロープレ・録画レビュー

    最後に、ここまでの型を個人技で終わらせないための運用です。3つだけ挙げます。

    1つ目は、準備の標準化です。商談の質は、始まる前に半分決まっています。相手の事業内容・代表の発信・採用状況を調べ、想定される課題と懸念に仮説を立て、その商談のゴール(即決を狙うのか、次回提案につなぐのか)を決めてから臨みます。この準備をチェックリスト化し、全員の当たり前にします。

    2つ目は、ロールプレイングです。テストクロージングの言い回しも、クロージングの順番も、第三者話法も、知識として知っていることと、口から自然に出ることの間には大きな距離があります。特に重要な提案の前には、上長や同僚を相手に通しで練習し、合格が出てから本番に臨む——この文化があるかどうかで、型の定着速度はまるで変わります。

    3つ目は、録画・録音のレビューです。自分の商談を見返すと、話した割合、テストクロージングの有無、期日を切れたかどうかが、記憶とはまったく違うことに気づきます。うまくいった商談とそうでない商談を見比べれば、改善点は誰かに指摘されるまでもなく見えてきます。成約率の測り方そのものは見込み客のフォローアップとあわせて、商談後の数字管理として仕組み化してください。

    XtoXの現場から:押しの弱さを「誠実さ」と呼んでいた話

    「うちは押し売りをしない誠実な営業が売りです」という会社の商談に同席すると、内容への合意も取れ、相手の温度も高いのに、最後が「ではゆっくりご検討ください」で終わっている場面によく出会います。数か月後にその案件を追うと、他社で始めていたり、何もせず課題を抱えたままだったりします。押さなかったことで、相手は何も得ていません。ご支援では、クロージングの順番と、期日を切る根拠づくり(開始時期・枠の設計)を整えてから、「ここまで合意いただけたなら、進めましょう。間違いないと思います」と言い切る練習をします。最初は全員が抵抗しますが、成約したお客様から「あのとき背中を押してもらえてよかった」と言われる経験を1回すると、認識が変わります。誠実さとは、引くことではなく、相手の利益を確信して導き切ることです。

    商談チェックリスト(10項目)

    次の商談の前後で、10項目を確認してみてください。

    導く商談セルフチェック(10項目)
    □ 【前】相手の事業・発信・採用状況を調べ、課題と懸念の仮説を立てた
    □ 【前】この商談のゴール(即決/次回提案/条件合意)を決めた
    □ 【中】裸の質問ではなく、事例と数字で足場を組んだ質問をした
    □ 【中】良い未来と、このままの未来の両方を想像してもらった
    □ 【中】説明を、相手の語った悩み・要望に紐づけてから話した
    □ 【中】「懸念ありますか」ではなく、テストクロージングで本音を引き出した
    □ 【中】内容→判断スタイル→期日つき提案の順番でクロージングした
    □ 【中】すべての商談で期日を切った(決まらない場合は3営業日以内に次の場を確定した)
    □ 【後】相手が話した時間より、「話せたと感じたか」を振り返った
    □ 【後】録画・録音で、テストクロージングと期日の有無を確認した

    よくある質問

    Q. 「営業が7割話す」と「話しすぎ」の違いは、結局どこにあるのですか?

    中身と反応です。話す7割の中身が、商品説明ではなく、事例つきの質問・未来のイメージづくり・合意の確認になっているか。そして話している間、相手の口数と質問が増えているか。営業が話しているのに相手の発言が深くなっていくなら、それは導けている7割です。相手が相づちだけになっているなら、それはただの話しすぎです。

    Q. 押しの強いクロージングに、どうしても抵抗があります。

    抵抗の正体を確かめてください。多くの場合、それは「自分の提案が本当に相手のためになるか、確信が持てていない」ことの裏返しです。確信が持てないなら、押す練習より先に、ヒアリングと提案の質を上げて確信を作るのが順番です。確信があるのに言い切れないなら、それは技術の問題なので、ロールプレイングで解決できます。押しの強さは性格ではなく、確信×技術の掛け算です。

    Q. この型は、どんな商談にも使えますか?

    骨格——7つの段階、話しやすくするヒアリング、テストクロージング、順番と期日——は、BtoBの商談にもBtoCの個別相談にも共通して使えます。一方で、期日や特典の設計は商材の単価・検討期間によって適切な形が変わりますし、広告規制のある業界では表現の制約もあります。骨格は共通、細部は商材ごとに設計する、と捉えてください。

    Q. オンライン商談で気をつけることはありますか?

    2つあります。1つは、資料を画面共有で出しっぱなしにしないこと。資料が主役になると会話が死ぬのは、オンラインでは対面以上です。もう1つは、テストクロージングと期日の合意を、商談後すぐのメールで文字にして残すこと。画面越しの合意は流れやすいため、「本日ご確認いただいた点」として書面化することで、次の場までの温度を保てます。

    まとめ:主役はお客様、進行役は営業

    「聞くが8割」という定説を疑うところから、この記事を始めました。成果の出る商談で実際に話しているのは、営業側の7割です。ただしその7割は、商品説明ではなく、番組を仕切る司会者のような進行——話しやすくなる足場づくりと、購買心理の7つの段階を一段ずつ進める働きかけ——でできています。だから主役であるお客様は「話を聞いてもらえた」「わかってもらえた」と感じ、テストクロージングで本音の懸念が出て、内容→判断→期日の順番のクロージングが、押し付けではなく背中押しとして届きます。

    最後に1つ、問いかけさせてください。直近の商談で、あなたは期日を切ったでしょうか。切れなかったとしたら、それは優しさだったでしょうか、それとも確信のなさだったでしょうか。相手の課題解決という共通のゴールに確信があるなら、導き切ることまでが営業の仕事です。その確信を作るところから、次の商談の準備を始めてみてください。

    XtoXは、600社以上の戦略設計実績をもとに、商談スクリプトの設計・クロージングフローの構築・ロールプレイング・商談同席まで、成約率の改善を実行レベルでご支援しています。自社の商談を「導く型」に変えたい方は、無料相談をご利用ください。マーケティングから営業までを一続きで設計する私たちの考え方は統合型マーケティング&セールス支援とはをご覧ください。

    無料相談に申し込む

    本記事の引用・転載を歓迎します。引用の際は「株式会社XtoX」の社名と本記事URLの明記をお願いします。

    ニュースレター

    BtoBマーケティング・法人営業・新規事業に関する最新のトレンドや調査レポートをお届けしております。

      このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleのプライバシーポリシー利用規約が適用されます。