カスタマージャーニーとは?作り方と、放置されない工夫まで解説
大阪府出身。幼少期に祖父が経営する建設会社の廃業を経験し、企業存続と経営の本質に関心を持つ。新卒入社したベンチャー企業では初月にトップマーケティング賞を受賞。その後、大阪支社のコンサルティング責任者として事業拡大を牽引し、社員40名から300名規模への成長と東証グロース上場に貢献。上場後はグループ企業の執行役員を歴任。2023年に株式会社XtoXを創業し、中小企業のセールス・マーケティング支援に従事。
大阪府出身。幼少期に祖父が経営する建設会社の廃業を経験し、企業存続と経営の本質に関心を持つ。新卒入社したベンチャー企業では初月にトップマーケティング賞を受賞。その後、大阪支社のコンサルティング責任者として事業拡大を牽引し、社員40名から300名規模への成長と東証グロース上場に貢献。上場後はグループ企業の執行役員を歴任。2023年に株式会社XtoXを創業し、中小企業のセールス・マーケティング支援に従事。
カスタマージャーニーの意味と作り方を解説。感情の欄は想像で埋めず、失注理由と商談で出た言葉から書き写します。段階の名前を営業の案件管理と揃える手順、放置される3つの理由、そして「意味ない」と言われる本当の理由まで。600社以上の戦略設計を行うXtoXが解説します。
カスタマージャーニーは、きれいな1枚の図を作る作業だと受け取られがちです。そして図が完成した時点で、多くの会社では役目が終わります。
半日かけて全員で付箋を貼り、模造紙を埋め、写真に撮ってデータにする。壁に貼る。そこから3か月、誰も開きません。「意味がない」「もう古い」と言われるのは、この経験をした人が多いからです。
作り方はひととおり押さえます。そのうえで、作ったものが使われ続けるために何を変えるかまで書きます。
カスタマージャーニーとは何か
カスタマージャーニーは、お客様が自社を知ってから、検討し、買い、使い続けるまでの道のりを、時間の順に並べたものです。日本語では「顧客の旅」と訳されます。
並べた図を、カスタマージャーニーマップと呼びます。1998年に、ヨーロッパの国際列車の企画で使われたのが始まりとされています。
形は決まっていて、たいてい表になります。
・ 横に 段階(知る → 調べる → 比べる → 決める → 使う)
・ 縦に そのときの行動/どこで接触するか/どう感じているか/こちらが何をするか
難しいものではありません。むしろ、作ること自体は誰でもできます。難しいのは、埋める中身をどこから持ってくるかと、作ったあとにどう使うかです。
何のために作るか
目的をはっきりさせておかないと、作る意味がなくなります。世の中で挙げられる効用は複数ありますが、実務で本当に効くのは2つだけです。
・ 抜けている場所が見える(比べている段階に渡すものが何もない、など)
・ 部署どうしで同じ絵を見て話せる(営業とマーケティングが別の相手を想像しなくなる)
1つ目が主です。施策を並べてみると、たいてい前半に集中しています。広告、記事、資料。人を集める手は何本もあるのに、比べている段階と、社内で相談している段階に渡すものが1つもない。
この穴は、1本ずつの施策を見ていても気づきません。並べて初めて見えます。そこがこの道具の値打ちです。
作り方の手順
手順は、どこで調べてもほぼ同じものが出てきます。短く押さえます。
・ 誰の道のりを書くかを決める(対象を1人に絞る)
・ 段階を分ける(5つ前後で足りる)
・ 段階ごとの行動と、接触する場所を書く
・ そのときどう感じているかを書く
・ いまやっている施策を、段階の下に置く
最後の1つを飛ばさないでください。新しい施策を考える前に、いまあるものを置きます。置いた時点で、穴が見えます。
対象を決める作業についてはペルソナの記事にまとめています。
ここまでは、どの解説にも書いてあります。実務で結果を分けるのは、4つ目の「どう感じているか」をどこから持ってくるかです。
感情の欄はどこから取るか
解説記事には「憶測で書かない」「客観的なデータに基づく」と書かれています。そのとおりです。ただ、どの記録から取るのかが書かれていません。
結果として、会議室で全員が想像で埋めます。「不安を感じている」「期待が高まる」。間違ってはいませんが、そこから打つ手が出てきません。
材料は、社内にあります。3つです。
1 断られた理由
いちばん濃い材料です。失注の理由は、その段階で解けなかった不安そのものだからです。
「社内で説明する材料がなかった」という理由が並んでいるなら、社内で相談している段階の感情は「不安」ではなく「説明できないことへの困り」です。書きかたが変わると、打つ手も変わります。前者からは何も出ませんが、後者からは「回覧できる1枚を渡す」が出ます。
2 商談で出た言葉
営業が聞いている質問が、そのまま感情の欄になります。「他社とどう違うんですか」と聞かれる段階と、「いつから使えますか」と聞かれる段階では、相手の状態がまるで違います。
聞くのは30分で足ります。「この段階で必ず聞かれることは何ですか」。それを段階ごとに書き写します。
3 問い合わせの本文
フォームの自由記述欄は、宝の山です。相手が自分の言葉で書いた、いちばん最初の状態が残っています。直近の30件を読み返すだけで、最初の段階の欄は埋まります。
案件の一覧表でやっていること
失注した案件に、理由を選ぶ欄を1つ足しました。選択肢は5つだけです。あわせて、商談で出た言葉をそのまま残す欄も作っています。
この2つをマップの段階ごとに並べ替えたとき、想像で埋めていた欄と、実際に起きていたことがずれている場所が見つかりました。
比べている段階で書いていたのは「価格が気になる」。ところが記録に並んでいたのは、「導入したあと、誰が面倒を見るのかが決まらない」でした。
価格表を作り直しても動かないはずです。材料が社内にあるのに、会議室で想像していました。
3つの記録を1か月ぶん読む
3つの材料をどこまで集めるかで迷ったら、直近1か月ぶんで足ります。古いものまで遡ると、当時と状況が変わっていて混ざります。
読むときは、直さないでください。「価格への懸念」とまとめず、「他社さんはもう少し安かった、と言われた」とそのまま書きます。まとめた瞬間に、打つ手を考える材料ではなくなります。
同じことが3回以上出てきたら、それは個別の事情ではありません。その段階に共通して起きていることです。マップに書くのは、この3回以上出たものだけで構いません。
1回しか出ていないものは、別の場所に控えておきます。次に読み返したときに増えていれば、そのとき足します。
段階の名前を営業と揃える
次に効くのが、段階の名前です。ここを揃えないと、マップは現場から切り離されます。
よくあるのは、マップの段階が「認知・興味・比較・購入」で、営業の案件管理の段階が「初回接触・提案・見積・決裁」になっている状態です。同じ商談を指しているのに、言葉が別々です。
こうなると、営業は自分の一覧表を見るときにマップを開きません。開いても、自分の案件がどこに当たるのかがわからないからです。
やることは簡単で、営業がすでに使っている段階の名前を、そのままマップの横軸にします。マーケティングの側が言葉を合わせにいきます。
建設業のお客様でやっていること
商談の進み具合を19の段階に分けて管理しています。段階が上がる条件は、すべて相手から出た言葉か、決まった期日です。
マップを作るとき、この19をそのまま横軸に置きました。ただし19列は広すぎるので、性質が近いものをまとめて5つの区切りにしています。
大事なのは、区切りの中に19の段階の名前がそのまま残っていることです。営業が自分の案件の段階を見れば、マップのどこにいるかが一目でわかります。
言葉を合わせただけで、営業から「この段階に渡すものがない」という指摘が出るようになりました。作った側が気づく前に、使う側が気づきます。
19に分ける必要はありません。営業が3つの段階しか持っていないなら、マップも3つで作ります。合わせるほうが先で、細かくするのはあとです。
1枚に全員を載せない
作りはじめると、必ず「あの業種はどうする」「小さい会社の場合は」という話が出ます。全部を1枚に入れようとした瞬間、使えないものになります。
どの段階の欄にも「業種によって異なる」と書かれた図は、何も言っていないのと同じです。
分けかたの基準は1つで足ります。渡すものが変わるかどうかです。同じ資料、同じ説明で通るなら、同じ1枚に載せて構いません。変えているなら分けます。
ただし2枚まで
3枚以上に増えると、今度は誰も全部を見なくなります。最初は2枚を上限にしてください。
BtoBで分けるなら、業種ではなく担当者と決裁者で分けるのが効きます。この2人は、同じ会社にいながら見ているものがまるで違います。
| 担当者 | 決裁する人 | |
|---|---|---|
| 調べる場所 | 検索・比較サイト・展示会 | 部下が持ってきた資料だけ |
| 気にすること | 使いやすいか・自分の手間が減るか | いくらかかるか・失敗しないか |
| 渡すもの | 使いかたがわかる資料 | 費用と効果が1枚でわかる紙 |
右の列は、こちらから直接会えないことがほとんどです。担当者に持たせるものを作るしかありません。この列を作ると、何を用意すべきかがはっきりします。
分けたあとに起きること
2枚に分けると、渡すものが足りていない側がはっきりします。たいていの会社では、決裁する人に向けたものが1つもありません。
担当者向けの資料は何種類もあります。機能の説明、使いかたの案内、無料で試せる形。ところが費用と効果を1枚にまとめた紙は、どこにもない。
これは作る側の都合が出ています。こちらが会って話せるのは担当者なので、その人に向けたものばかり増えます。会えない相手に向けたものは、意識して作らないと生まれません。
2枚に分ける値打ちは、この偏りが目に見えることにあります。1枚のままだと、偏っていること自体に気づけません。
放置される3つの理由
せっかく作ったマップが開かれなくなるのには、決まった理由があります。3つです。
1 置き場所が悪い
壁に貼ったマップは、貼った週しか見られません。写真に撮ってどこかのフォルダに入れたものは、探せなくなります。
置く場所は、営業が毎日開くファイルの隣です。案件の一覧表と同じ場所に、同じ形式で置いておきます。表計算の別のシートで構いません。
2 更新する人が決まっていない
「定期的に見直す」と書いてある解説は多いのですが、誰がやるかまで決めていないと、誰もやりません。
決めるのは3つです。担当者、頻度、きっかけ。頻度は四半期に一度で足ります。きっかけは「失注が10件たまったら」のように、出来事にひもづけると忘れません。
3 完成させてしまった
これがいちばん多い。きれいに作り込むほど、直しにくくなります。色をつけ、線を引き、体裁を整えたものは、手を入れるのに気が引けます。
最初は文字だけの表で構いません。空欄があってよい。むしろ、空欄が残っているほうが「ここを埋めよう」という話になります。
「意味ない」と言われる本当の理由
この言葉に対する反論は、どの記事にも書いてあります。「買いかたが複雑になっただけで、考えかたが古くなったわけではない」。そのとおりです。
ただ、現場で「意味ない」と言われる理由は、たいていそこではありません。作る人と、使う人が違うからです。
マーケティングの担当者が半日かけて作り、営業に配る。営業から見れば、自分が呼ばれてもいない場で決められた図です。しかも自分が使っている段階の言葉と違う。使わないのは当然です。
防ぎかたは2つです。
・ 営業をその場に呼ぶ(30分でよい。感情の欄だけ埋めてもらう)
・ 営業の言葉をそのまま使う(言い換えない)
1つ目が効きます。自分が書いた行が入っている図は、捨てられません。作る作業そのものが、部署をつなぐ場になります。
成果は施策が1つ動いたかで見る
作ったあと、何をもって「やってよかった」と言うか。マップの出来ばえで判断しないでください。
見るのは1つです。作った結果、施策が1つでも動いたか。
・ 空いていた段階に、新しく渡すものを1つ作った
・ やっていた施策のうち、効いていないものを1つやめた
・ 渡す順番を入れ替えた
このどれかが起きていれば、作った価値があります。起きていないなら、図がどれだけ立派でも意味がありません。
やめる判断が出るのは、よい兆候です。マップに置いてみると、同じ段階に施策が3つ重なっていることがあります。そこは1つに減らして、空いている段階へ手を回せます。
段階ごとに渡すものを設計する考えかたはリードナーチャリングの記事にまとめています。
個人向けサービスのお客様でやっていること
相談の場で出た言葉を、要約せずそのまま記録に残しています。相談が1回で終わったか、2回目・3回目まで続いたかもあわせて並べています。
マップの感情の欄は、この記録から書き写しただけです。考えていません。
並べてわかったのは、1回目と2回目のあいだに何も渡していなかったことでした。その空白に、相談のあとで渡す1枚を作りました。
やったのはそれだけです。マップの見た目は文字だけの表のままですが、施策が1つ動きました。それで足ります。
2回目からは15分で済む
一度作ってしまえば、次からは作り直しません。足すのは、増えた記録の行だけです。
四半期に一度、失注の理由と商談で出た言葉を読み返して、新しく3回以上出てきたものを書き足します。15分で終わります。
このとき、前の回に書いた行のうち、もう出てこなくなったものに印を付けます。消さずに残します。手を打った結果として消えたのか、相手の事情が変わったのかが、あとから読めるからです。
打った手が効いていれば、その段階の言葉は変わります。変わらないなら、手が届いていません。マップは、その判定に使えます。
最初の1時間でやること
半日かける必要はありません。1時間で形になります。順番はこうです。
| 時間 | やること |
|---|---|
| 最初の10分 | 営業が使っている段階の名前を、そのまま横に並べる |
| 次の20分 | いまやっている施策を、段階の下に置く |
| 次の20分 | 失注の理由と商談で出た言葉を、段階ごとに書き写す |
| 最後の10分 | 空いている段階を1つ選んで、次にやることを決める |
この順番が大事です。施策を先に置くと、穴が見える状態で感情を書くことになります。逆にすると、感情の欄を埋める作業に時間を取られて、施策まで到達しません。
最後の10分は必ず残してください。次にやることが決まらないまま終わった会は、そのまま放置に向かいます。
確認リスト8項目
作ったあと、次を確かめてください。
1 段階の名前が、営業の案件管理と同じ言葉になっているか
2 感情の欄を、記録から書き写したか(想像で埋めていないか)
3 いまやっている施策を、すべて段階の下に置いたか
4 空いている段階が、1つ以上見つかったか
5 1枚に全員を載せず、2枚までに収めたか
6 作る場に営業が同席したか
7 置き場所が、営業が毎日開くファイルの隣か
8 更新の担当者・頻度・きっかけを決めたか
6番と7番が抜けている場合、どれだけ中身がよくても3か月で開かれなくなります。ここは作業ではなく、決めごとです。
よくある質問
BtoBでも使える?
使えます。むしろ関わる人が多いぶん効きます。ただし担当者と決裁する人で分けてください。同じ会社にいても、見ているものがまるで違います。
段階は細かく分けるべき?
最初は5つ前後で足ります。細かくするより、営業が使っている言葉と揃えるほうが先です。合ってから増やしてください。
顧客は一直線に進む?
進みません。行ったり戻ったりします。戻っている場所には、進めない理由があります。そこが直す場所だと考えてください。
誰が作るのがいい?
1人で作らないでください。営業を30分だけ呼んで、感情の欄を埋めてもらいます。自分が書いた行がある図は、捨てられません。
どのくらいで見直す?
四半期に一度で足ります。ただし「失注が10件たまったら」のように出来事にひもづけると、忘れずに続きます。
まとめ:埋める材料は社内にある
カスタマージャーニーは、お客様が知ってから使い続けるまでの道のりを、時間の順に並べたものです。並べる目的は、施策が抜けている段階を見つけることにあります。
埋める材料は、会議室にはありません。断られた理由、商談で出た言葉、問い合わせの本文。すでに社内にあるものを書き写すだけで、想像で埋めた欄より使えるものになります。
そして、段階の名前を営業の言葉に揃えてください。マーケティングの側が合わせにいきます。言葉が違うだけで、現場からは別の道具に見えます。
「意味がない」と言われるのは、考えかたが古いからではありません。作る人と使う人が違うからです。営業を30分呼ぶ。それだけで結果が変わります。
XtoXは、600社以上の戦略設計実績をもとに、顧客の道筋の設計から、現場で使われる形への落とし込みまでを一気通貫でご支援しています。作って終わりから抜けたい方は、無料相談をご利用ください。
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